日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ごはんのおとも』
『ごはんのおとも』 第2巻
たな 実業之日本社 ¥950+税
(2016年11月18日発売)
書評の書き方を勉強している。書評を書くのが難しいから。
そんなわけで、書評本を買い集めている。書評本を読むのは楽しい。
「読んだ本について自分の思うことを書く」文章だからこその刺激がある。
エッセイよりもずっとセキララに書き手の人となりがわかっちゃう気がする。
そんなわけで、愛読書「週刊文春」はますますたいへんよい教科書となるわけである。
書評のページが多いから。書評じゃなくて音楽評(?)の連載もあって、毎回おもしろいのだ。
「近田春夫の考えるヒット」。いつかこんなふうに書けるようになりたいなり。
よっしゃ! 『ごはんのおとも』第2巻。
路地裏の料理店「ひとくちや」に集まる人たちの暮らしを描くほのぼのグルメマンガである。
「マンガは白黒派」というか、「カラーページは特別なもの」みたいな意識があるからか全編カラーというのにびっくり。なんか、「目の潰れるようなぜいたくをしている……」という気分になる。
ラーメン全部乗せに生ビール! みたいな。
丸っこい線で描かれた人物がかわいい。表紙に登場する猫背のお父さんにめっちゃ萌える。
そして食べものも、文句なくおいしそうである。おいしそうなうえに、かわいい。
「かわいい」。『ごはんのおとも』の世界観は、そのひと言につきると思う。
『ごはんのおとも』のコマ割り、というか構図からも、ものごとをかわいらしく見せる著者のセンスがうかがえる。少女マンガなら、キャラクターの背景に花が舞うよなー、という場面で、『ごはんのおとも』ではソラ豆とか、焼いた夏野菜とか、ひじきとかが舞うのだ。それがかわいい。
ひじきがかわいいってなんだよって感じだけど、かわいいからしかたない。
きっと作者は、食べものをよく見て、人が笑みをこぼすタイミングもよく見て、『ごはんのおとも』を描いているんじゃないかな、と想像してしまう。
絵もストーリーも、おいしいものと周りの人の笑顔を愛しています、という気持ちにあふれているのだ。
あと、懐かしさに涙が出そうになったのが、電話帳である。
第2巻のなかに1コマだけ、ページがアルファベット順にだんだんと長くなる、昔ながらの電話帳が登場する。子どもの頃、どこの家にもあったやつ。
特に話の筋とは関係ないんだけど、懐かしいものを見れてうれしい、という感じ。
あったかくてかわいい暮らしのエッセンスは、なにげない日常のなかにこそあるのだと気づかせてくれる1冊。何かとイベントの多い12月、大切な人へ贈るのもおすすめ。
<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。