日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『かふかふ世紀末 ~かふん昔ばなし~』
『かふかふ世紀末 ~かふん昔ばなし~』 第2巻
かふん KADOKAWA ¥630+税
(2016年11月21日発売)
虚弱で泣きやすくてよく吐く男子「かふん」が、強いオカーサンや、迷信深い祖母・親族に囲まれた幼少のみぎりの細かいエピソードを綴るエッセイ風ショートコメディの「フィクション」だそうだ。
それにしては、読めば読むほどデジャヴを感じずにいられない。
旅先で(今考えれば子どもだましな)お土産に心を奪われる、通販の下着カタログがエロアイテム扱い、しょうもないことでクラスの英雄になるがあっという間に飽きられる、などなど。
あの頃の記憶が呼びおこされ「あるある!」を連発すること間違いなしなのだ。
20世紀末が舞台なので、たとえば小学生でもコンタクトレンズが普及しているのに世代差も感じるが、かふんさんの目から見た小学生ライフはかなり普遍性がある。
これから小学生がスマホを当たり前に使いこなす時代になっても、根っこの部分はあまり変わらないのではないのでは、と妙な安心感がわく。
かふんさんは「とても手がかかる心配な子」であろう。
でも、偏食なりに骨は丈夫だった事件や、ものすごく地味ながらケンカに勝利する姿には、立派になったな! と親心がめばえてしまう。
ちなみに育てあげたオカーサン当人はそっけなかったりするが、それがかえって心地よい。
お楽しみ(?)の「因果関係がわからない不条理な怪異譚」もあるので、夜読む時にはご注意を。
しかし、例のごとくオカーサンや、担任の先生による対応の揺るぎなさにも注目したい。
人は、怖いモノがなくなった時、真に大人になるのかもしれない……。
ラストで、涙なしがウリのこの作品のコンセプトを裏切り、泣ける話になりそうな展開もあるが、まあ、そこはそれ。
が、今巻でこのシリーズが終わってしまう件に関しては本気で泣きたくなる。
チクリ魔のコラッタちゃんすら、本当の同級生だったような気がしてきて、愛おしいのだから。
巻末で予告されている、「ComicWalker」にてかふんワールドが楽しめる新作を、粛々と待とう。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWEB記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。