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『波よ聞いてくれ』 第3巻 沙村広明 【日刊マンガガイド】

2016/12/20


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『波よ聞いてくれ』


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『波よ聞いてくれ』 第3巻
沙村広明 講談社 ¥590+税
(2016年11月22日発売)


2016年「このマンガがすごい!」オトコ編6位を獲得した『波よ聞いてくれ』の最新刊。

スープカレー店で働いていたミナレは、ひょんなことから中年ディレクターにトーク能力を買われ、ラジオのDJとしてスカウトされる。

居酒屋トークの録音&無許可放送→ラジオ局襲撃→いきなり無職住所不定→ラジオデビューという、先のサッパリ読めないジェットコースターな展開は、本巻ではさらにカオス度を増してパワーアップ!

自分を裏切った元カレを埋蔵するフェイクホラー企画を怒濤のテンションで乗りきり、アメージングな快楽にちょっぴり目覚めるも、次回のネタに困り、彼女の霊に悩まされているという電波リスナーの自宅にやむなく突撃。するとそこはミナレのアパートの下の部屋で、お札が張りめぐらされた部屋の天井からは謎の黒い液体がしたたってきて――。

って、オカルト・電波・猟奇犯罪の香りただよう、うさんくさすぎる展開にページをめくる手が止まらない!

さすがミナレさん! と拍手したくなる衝(笑?)撃のオチもすばらしいが、やはり本作の醍醐味は、ひとりボケツッコミな独特のセリフ回しと小気味よいテンポでどんどん暴走してゆくトーク部分。

「友達から『おんな太閤記』のDVD借りたはいいけど返す時 中身間違えて『徳川女刑罰絵巻・牛裂きの刑』のディスク入れて返すし…」といった、会話の文脈とはまったく関係ない、マニア心をくすぐるネタもハマる人にはハマる。
読者の共犯意識をくすぐる、この「くだらなおもろさ」は、まさに「マンガ版・深夜ラジオ」というべきものだろう。

ミナレさん以外のキャラも負けずに立ってきて、今後イイ感じに物語をかきまわしてくれそうな予感大。前代未聞の怪作がどこへたどりつくのか、ニヤニヤしながら見届けるべし!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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