日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『吸血鬼すぐ死ぬ』
『吸血鬼すぐ死ぬ』 第4巻
盆ノ木至 秋田書店 ¥429+税
(2016年11月8日発売)
風が吹いても死ぬザコ吸血鬼ドラルクと、苦労人気質の吸血鬼ハンター・ロナルドの爆笑同居ギャグ『吸血鬼すぐ死ぬ』の4巻。
夜な夜な現れる変態吸血鬼と、それに振り回される吸血鬼ハンターのドタバタで新横浜はきょうも騒がしい!
絶好調の第4巻も吸血鬼熱烈キッス、吸血鬼野球拳大好きなど、「長生きすると頭ポンチになる奴もいるから」というひと言が腑に落ちる奴らだらけ!
特に吸血鬼野球拳大好きはハンターたちがつどうギルドのまん前に現れた恐れ知らず。
「アウトセーフ よよいのよい!!」の掛け声で相手を催眠術にかけ野球拳に強制参加させ、野球拳中は結界を張って外からの攻撃をはねのける。
猛者ぞろいのハンターたち(の衣服)を次々にうち破り、ついにその毒牙を女性ハンターに向ける吸血鬼野球拳大好き! はたして勝負の行方は!?
で、そんな下ネタ系吸血鬼の登場にあてられたのか、この巻ではサテツ(腕の人)、ドラルク(主人公)、マリア(姉御肌の吸血鬼ハンター)、ヒナイチ(優等生タイプの吸血鬼対策課エース)、ロナルド(主人公その2)らがパンツを脱いで脱いで脱ぎまくる……そんな巻!
ちなみに表記は脱いだ順です。
サテツのパンツがゾウさん柄だと判明したり、必要な時はロナルドが下半身だけ穴に入る疑惑がささやかれたり、…って、やけに下半身に話題が集中する巻なのだ。
下ネタ系ギャグの応酬についつい目を奪われがちになるが、思わずほろりとさせられるエピソードもある。
ドラルクをめちゃくちゃ甘やかす親バカなバカ親・ドラウスがロナルドの事務所に押しかけてくる。
行き違いで会えない息子の姿を探して方々を訪ね歩くうち、ドラルクがいかに大勢の仲間に囲まれ過ごしているかを実感するドラウス。
かつて、人の寄りつかない城でジョンと過ごしていたドラルクの孤独がここにはもうないと知った父親は、息子を連れ帰るのをやめる。
騒々しいながらもドラルクを取り巻くあたたかな人間関係がドラウスの目を通じて描かれ、なかなかジーンとさせられる。
さらに、第4巻の大きなトピックといえば、吸血鬼対策課の隊長・ヒヨシの正体が判明したこともある。
じつは隊長は、ロナルドの……何なのかは単行本でご確認を。
幼少時代のロナルドの回想によれば、兄のほかにも妹がいたようで、この先どのようなかたちで作品に登場するのか非常に楽しみだ。
そのほか催眠術キットでみんなの心が入れかわってしまったり、イマイチ存在感が薄い腕の人をドラルクがプロデュースしたり、お留守番を頼まれたジョンが大失敗しちゃったり、準備運動が終わった時点で負傷者が続出するオータム書店の社内大運動会に強制参加させられたり、どこから読んでもドタバタと楽しいエピソードが盛りだくさん。
肩肘張らずに楽しめる、マンガらしいマンガをお求めの人はぜひ手に取っていただきたい!
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。構成を担当した『てんとう虫コミックスアニメ版 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』が発売中。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。