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1月1日はアニメ『鉄腕アトム』が放送を開始した日 『ブラック・ジャック創作秘話』を読もう! 【きょうのマンガ】

2017/01/01


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

1月1日は『鉄腕アトム』の放送開始日。本日読むべきマンガは……。


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『ブラック・ジャック創作秘話 ~手塚治虫の仕事場から~』第3巻
宮崎克(作) 吉本浩二(画) 秋田書店 ¥648+税


1963(昭和38)年1月1日は、フジテレビ系列で国産初の長編テレビアニメーション『鉄腕アトム』の放送が開始された日。
毎週放送される30分のアニメーションの制作が可能なのか? と業界人からも疑問視されながらスタートし、最高視聴率は40.7パーセントを記録。1966(昭和41)年12月31日の最終回まで、全193話が放送された。

アニメ『鉄腕アトム』放送開始日にふさわしいマンガは様々なものがあるが、『ブラック・ジャック創作秘話』の第3巻に収録のエピソード「手塚治虫と6人の孫悟空(前編)」にも『鉄腕アトム』制作に乗り出す様子が描かれている。

手塚がディズニー映画の信奉者だったことは有名だ。
『白雪姫』を映画館で50回観た、『バンビ」』を映画館で80回観た、という話を本人もしていたという。
昭和20年代には『バンビ』、『ピノキオ』のコミカライズを手がけてもいる。
何よりそのシンプルな線で動きを伝える流麗で丸いタッチに、ディズニーからの多大な影響が見て取れる。

もともとアニメーションへの憧れを強く抱いていた手塚だったが、1960(昭和35)年に新築した仕事場兼住居の庭の一角に窓ひとつないコンクリート製の小屋を建てる。
手塚番の編集者からは「霊安室みたい…」とさんざんな評判の小屋だったが、そこはセルの撮影を行うアニメスタジオだった。
そして隣接する土地を購入し、住居の横に虫プロダクション第一スタジオを建設。本格的なアニメーション制作を始める。
憧れを夢に終わらせず、実現してしまう手塚の執念に圧倒される。

『ブラック・ジャック創作秘話』の第2巻には、当時の虫プロダクションの狂乱の様子が描かれた「虫プロてんやわんや」も収録されている。
こちらは不夜城と化し、連日の徹夜から倒れる者続出の虫プロの内情を、制作進行として入社した新人社員の目を通して描かれる。
机に向かっていたかと思うと突然絶叫するアニメーター、過労で倒れるアニメーター、トイレに行くふりをして現場から逃走するアニメーターなど、毎週放送するアニメをつくらなければならなかった現場の壮絶さたるやすさまじい。
当の手塚本人も、ただでさえ猛烈に忙しいマンガ連載の合間をぬって、アニメ用のゲストキャラクターの設定画を描かなくてはならない日々。
社長と社員という間柄ながら、漫画家・手塚治虫からアニメ用の設定仕事を制作進行がもぎ取る攻防戦は涙と笑いなくして見ることはできない。

証言者のひとりとして作中にも登場している鈴木伸一だが、アニメ『鉄腕アトム』は彼の人生も大きく変える契機となる。
『鉄腕アトム』をみずから制作した手塚治虫の影響で、鈴木伸一、石ノ森章太郎、つのだじろう、藤子不二雄A、藤子・F・不二雄、赤塚不二夫らが中心になって、アニメ制作会社スタジオゼロをつくってしまうのだ。これはタダゴトではない。

当時すでに中堅作家となった漫画家たちにアニメ制作会社を設立させてしまうとか、その影響力はちょっとすごすぎて「今でいう○○」みたいに置き換えられない事態だ。
日本中の子どもたちを熱狂させたアニメ『鉄腕アトム』。そのアトムショックは、こんなかたちでも飛び火していたのだ。

日本のマンガ史、アニメ史に偉大な足跡を残した『鉄腕アトム』の放送開始を記念し、1月1日は『ブラック・ジャック創作秘話』第3巻の「手塚治虫と6人の孫悟空(前編)」を読もう!



<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。構成を担当した『てんとう虫コミックスアニメ版 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』が発売中。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。

単行本情報

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