日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『僕のジョバンニ』
『僕のジョバンニ』 第1巻
穂積 小学館 ¥429+税
(2016年12月9日発売)
『うせもの宿』に続く、穂積の新連載。
海難事故に遭い、死の淵にあった郁未。彼を岸まで導いたのは、鉄雄が弾くチェロの音色だった。
鉄雄の家で暮らすようになった郁未は鉄雄だけに心を開き、生涯絶対の友でいることを約束する。そんな郁未に鉄雄はチェロを教えるが、そのことがのちに2人の関係を大きく変えてゆくことになる。
アンニュイなムードがただよう海辺の街、チェロという題材、深い絆で結ばれた少年2人(金髪ハーフという設定の郁未の美少年っぷりよ!)の友情、それを脅かす残酷な運命――といった設定や世界観は、同じ著者の『さよならソルシエ』を彷彿させつつも、どこか『トーマの心臓』、『風と木の詩』、『BANANA FISH』といった往年の少女マンガをも彷彿させる、抒情的ロマンにあふれている。
すでに哀しい予感がヒシヒシとただよっていて、せつなくも続きが気になってしょうがない、巧妙なストーリーテリングはさすが。
穂積といえば「ラストのどんでん」を期待してしまうムードもあるが、それに捉われず、2人の繊細で甘美な(BLファンには特に……)関係性を丁寧にしっかりと、描ききってほしい!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69