日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ハードボイルド園児 宇宙くん』
『ハードボイルド園児 宇宙くん』 第4巻
福星英春 日販アイ・ピー・エス ¥640+税
(2017年1月16日発売)
映画化、アニメ化で話題のマンガなど200作品以上が、Web上にて毎日無料で読むことができる「LINEマンガ」。そのLINEマンガで、「無料連載 ギャグ部門」で歴代1位の人気を誇るのが本作『ハードボイルド園児 宇宙くん』である。
主人公は、4歳児の染谷(そめや)宇宙。
宇宙と書いて「コスモ」と読む、キラキラネームを持つ幼稚園児。
でも、その思考はハードボイルドである。
「ノアは神の指示に従い ゴフェルの木で方舟(はこぶね)をつくった」
「そして家族と動物たちを乗せた」
「船に乗れなかったおれは 巨大な洪水に飲み込まれた」
なんて、『創世記』を引用して独白したりするわけだが、要するにおねしょをしちゃった、というわけで、このあたりは普通の4歳児なのだ(と、いうかケンカも弱いし、不器用だしで、普通の4歳児より、ヘタレかもしれない)。
4歳児がいつ、どこで『創世記』を覚えたんだよ、なんてヤボなつっこみはなしにして、『ハードボイルド園児 宇宙くん』は、こうした宇宙のハードボイルドなモノローグと、ヘタレな行動のギャップが楽しめるギャグマンガなのである。
ミステリファンとしては、二階堂黎人の『ボクちゃん探偵シリーズ』を想起させる作品で、〈ボクちゃん探偵シリーズ〉の新作も読みたくなってしまった(復活しないかな……)。
「宇宙くん」は、LINEマンガに全話アップされていて、無料で読むことができる(2017年1月28日現在)。第4巻より先のエピソードもLINEマンガには掲載されているので、「じゃあコミックス買っても意味ないじゃん」
と、思うかもしれないが「コスモくんのハードボイルド相談室」というコーナーがあったり、描きおろしエピソードが掲載されていたり、というコミックスだけの特典もあるのだ。
一方で、LINEマンガにはコミックスにはない、福星が読者と一問一答する「質問回答コーナー」がある(福星英春の兄は『ピンキーは二度ベルを鳴らす』等のうめざわしゅん、といった情報はコミックスには載っていないが、「質問回答コーナー」では既知の事実として扱われている)。
コミックスとWeb――その両方を見るのが『宇宙くん』を楽しむうえでは一番よいのだろう。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。
「ミステリマガジン」(早川書房)にミステリコミックの総括を執筆(隔号)。『本格ミステリベスト10』(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。