日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『魔術師A』
『魔術師A』
意志強ナツ子 リイド社 ¥719+税
(2017年1月20日発売)
チェコ国立芸術アカデミー卒、2014年に「トーチweb」に発表されたデビュー作『女神』がたちまち話題に。注目の新人のデビュー短編集がいよいよ降臨だ。
いやはや、冒頭の『女神』からグイグイ来ますよ。
本作の主人公・ありさはセンスを自負する女子高生だ。クラスメートは馬鹿ばっかし。
まあまあ自分についてこれる少ない友人たちのなか、かっこいいモノの発信源になって自尊心を満足させている。
そんな彼女が、未知の価値観を持つ少女・メグと出会って……。
特別な人間、孤高の存在であるってどういうことなんだろう?
この問いを投げかける主人公たちにもたらされる答えはおおむね厳しいものだが、それは破滅ではない。破滅じゃないから甘美に酔えやしない。
酔うことを許さず、はたから見たらこっけいだとしても「生きていく」ことのリアルを突きつけてくるのが本作である。そうだ、「かっこいい」は、「みんな」と共有するものじゃないんだ。
こうした示唆を与えてくれる――表題作『魔術師A』にも登場するメグというキャラクターの、長い物語をぜひ読んでみたいと思う。
著者の肩書きは2つ。
漫画家と、もうひとつは魔術師である。
マンガ執筆と並行して魔術研究を行っているという著者はいったいどんな人物なのか、ご本人にも興味がわいてしまうのだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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