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『ベルサイユオブザデッド』 第1巻 スエカネクミコ 【日刊マンガガイド】

2017/02/05


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ベルサイユオブザデッド』


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『ベルサイユオブザデッド』 第1巻
スエカネクミコ 小学館 ¥552+税
(2017年1月12日発売)


舞台となるのは、かの市民革命が勃発する直前である18世紀のフランス。
次代の王妃としてフランス王室に迎え入れられるマリー・アントワネットとその一行は、祖国オーストリアからの道中にて「不死者」──いわゆるゾンビの集団に襲撃されて壊滅してしまう。
そして唯一の生き残りとなったのは、マリー・アントワネットの影武者をつとめる双子の弟・アルベール。国策のために結婚だけは成立させる必要があると判断したアルベールは、アントワネットに成りすまして王室入りを果たすが、死線を越えた彼はすでに悪魔に魅入られ……? というストーリー。

ゾンビに悪魔、そしてフランス革命に女装……と、開幕から盛りに盛った感もある状況設定ではあるが、おそらくそこから感じられるであろう、荒唐無稽さは意外なほど控えめ。
なにせアルベールが正体を偽って女装していることは早々に露呈し、ゾンビすらも現段階では物語のほんの背景としかいえない扱いなのである。
フォーカスが当てられるのはむしろ、王室内のドロドロした人間模様。
そもそも事件の発端であるゾンビの襲撃も、ルイ15世の公妾であるデュ・バリー夫人の差し金であり、さらにアントワネットの夫であるオーギュスト(のちのルイ16世)も、趣味の錠前作りに没頭するおとなしい男かと思いきや、重大な秘密を隠し持ち……と、おおよそマトモな人物が登場しない。
ただひとり、正常な感覚を持っていると思われるのは、ベルサイユ宮殿の傭兵・バスティアンだが、アルベールの正体がただならぬもの(女装しているとか、そういう問題ではなく)であるとうすうす感じているだけに、その行く末には不安を感じずにはいられない。
もっとも、ほぼ全員が「一寸先は闇」であることは間違いなく、そのヒリヒリした緊張感こそが本作の魅力となっている。

史実からして残酷な処刑や血なまぐさい事件に彩られた時代ゆえ、そこにおそらく人間ではないアントワネットやらゾンビやらがからむと、いったいどんなことになるのやら興味津々。
なぜにフランスにゾンビが蔓延しているのか、そしていかなる道筋をたどって王政は崩壊していくのか──。
かつて『放課後のカリスマ』では偉人たちのクローンが集う学園を描いたスエカネクミコが、今度はどのように史実を血で塗り替えていくのだろうか。その展開から目が離せない。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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