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2月6日は「日本相撲協会」が2011年春場所の中止を決定した日 『鮫島、最後の十五日』を読もう! 【きょうのマンガ】

2017/02/06


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

2月6日は日本相撲協会が2011年春場所の中止を決定した日。本日読むべきマンガは……。


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『鮫島、最後の十五日』 第1巻
佐藤タカヒロ 秋田書店 ¥429+税


大相撲の倫理面に大きな影を落とす問題が立て続けに発覚したのは、今から6~7年前のことだ。

まず2010年、親方・現役力士・年寄といった大相撲関係者が、暴力団のしきるプロ野球賭博に加わったというスクープが「週刊新潮」誌によって報じられた。
警察の調べが進むにつれ、当初は否定調だった相撲協会もついに問題があることを認め、大関クラスまで含む数十名が野球だけでなくゴルフや麻雀など様々な賭博に関与、さらには関係者と暴力団との交友関係も明るみに出た。

もちろん世間は騒ぎになったが、ことはこれだけで終わらなかった。
続く2011年、賭博問題に関する捜査で押収されていた携帯電話を調べたところ、一部の力士が金銭をやりとりして勝ちの白星をお互いに融通する、いわゆる“八百長”がメールを介して行われていた形跡があったのだ。

土俵の外では賭博、内側では八百長。
日本の国技を称する世界の歴史的な汚点である。相撲協会にも、もはや立つ瀬はない。
疑惑を残したまま本場所を開いても国民の理解を得られないだろうという判断が下り、結果、2011年は春場所が中止という異例の事態をむかえた。
その中止決定の発表日が、2011年のきょう、2月6日である。

さて、そんな問題を思い出すにあたっては、あえて相撲精神の気高さが燃え盛るような作品がいい。

ということで『鮫島、最後の十五日』を挙げておきたい。
「週刊少年チャンピオン」連載の相撲マンガ『バチバチ』『バチバチBURST』に続く第3章であり、現在進行中の最終章である。

主人公は、伝説的な強さを誇りながらも暴力事件を起こして角界を追われて落ちぶれた大関のひとり息子・鮫島鯉太郎。
荒くれた不良として育ちつつも、相撲への強い愛着を抱えて稽古を重ねていた彼は、あるきっかけで親方にスカウトされ、大相撲入りする。

相撲取りとしては絶望的に体格が小さい鯉太郎だが、常に前へ前へと突き進む死に物ぐるいのハングリー精神で強敵にくいさがり、ついには幕下優勝をおさめるまでに成長。
最初は彼の素行を嫌っていた観衆やライバルたちはいつしか鯉太郎の熱気にあてられ、相撲界はかつてない盛り上がりを見せていく……というのが『バチバチ』からの大筋だ。

わずか数秒~数十秒の取り組みのなかで、高度な技のかけひきや、力士それぞれの人生が交錯するさまを描く密度の高い表現力に支持され、2009年に第1章『バチバチ』が連載スタートして以来、2010年代のチャンピオンで常に中堅以上の位置でどっしり支えるシリーズとなっている。

過去2作のなかで、鯉太郎はずっと、小兵だが全身全霊をつくしてボロボロになりながらも体格差のある相手とわたりあう姿を見せてきた。
しかし『鮫島、最後の十五日』では、それがとうとう臨界を越えて、逆に向かう。

最終章『鮫島、最後の十五日』で描かれるのは、体格差のある相手とわたりあってボロボロになった小兵の身体が壊れていく、残酷な過程である。
第1話でひとりの力士が倒れこむ図から始まり、そこに至るまでのわずか15日間を丁寧にうめていくという構成で、読者は避けられない結末に向けたカウントダウンに引きこまれていく。

相撲にすべてをかけた男が、かけたすべてを打ち砕かれながら、それでも、死んだように生きてたまるかという高潔な意志をもって最後の最後まで燃え盛ろうとする純粋さと、悲壮さ。

当然そこには、賭博や八百長の不純が入りこむ隙間など、あるはずもないのだ。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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