日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『劫火の教典』
『劫火の教典』 第2巻
伊勢ともか 小学館 ¥583+税
(2017年1月12日発売)
遺跡から発掘された謎の立方体、「鑑暮の賽(かんがくれのさい)」。
発掘した軽井沢教授はそのオーパーツに胸をおどらせた。ところが学会はガラクタだと一蹴。
彼の研究に出資したいという団体が現れる。
宗教団体、光光会(こうこうかい)。
多大な資金を得た軽井沢は、宗教団体に所属しながら発掘を再開。
ついに「劫火の教典」と呼ばれる書物を発掘する。
序盤は軽井沢教授を中心に、人をも簡単に殺す新興宗教団体のヤバさがもりもり描かれる。
人柱として女性を生贄にし、町では無差別殺人テロ。
第2巻以降は、光光会の企みを阻止した少年と、軽井沢の娘ねねが、成長した状態で主人公になる。宗教団体事件で産まれてしまった超常の何かが、裏で動き始める。
何かを信じ、熱狂する人間の描写がうまい。
軽井沢教授はそもそも、宗教に興味も偏見もなくフラットだった。
あくまでも出資してくれるから、自分もがんばって発掘しよう、というビジネス的な距離だ。
生き生きとして、まじめに活動する周囲に、彼も好意を抱き始める。
そして、しだいによくわからないヘッドギアをつけて、霊的感覚が云々とかいい始める。
あたかも自然な流れであるかのように。
洗脳なんてしなくても、人は簡単に飲みこまれてしまう。
1巻から始まる事件は、いったん収束を迎えたかのように描かれている。
しかし2巻のねねは、警察も知らない、過去の光光会がらみの事件の真相を、覚えている。
まだ何かある、宗教団体の事件は終わっていない。
1、2巻同時発売のこの作品。第2巻からが物語の、終わりの始まりだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」