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2月27日はトヨタ自動車が「ソアラ」を発売した日 『シャコタン☆ブギ』を読もう! 【きょうのマンガ】

2017/02/27


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

2月27日トヨタ自動車がソアラを発売した日。本日読むべきマンガは……。


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『講談社漫画文庫 シャコタン☆ブギ』 第1巻
楠みちはる 講談社 ¥550+税


高級車といえば、BMWやメルセデス・ベンツなどのヨーロッパ産が先行し、国産の強みはまだ庶民派な小型車にとどまっていた昭和50年代半ばごろ。
まず日産の「レパード」が、国産高級車の市場に新たな風を吹きこんだのに続き、トヨタ自動車も自社の新しい代表格となる2ドア箱型(いわゆるクーペ)車種を開発し、大きく躍進した。

その名は、そう、「ソアラ」である。

2.8L6気筒、DOHCで2800CCのM型エンジンは、当時の国内最高出力となる170馬力。
デジタル表示のメーター、タッチパネル操作のエアコン、コンピュータ制御でショックアブソーバーを自動調整するシステム「TEMS」など、機構面でも最先端技術の固まりだった。

「未体験ゾーンへ」
「すべてのGTを、超えて存在する。」
「至福のとき、ここに極まる」
……カタログにそえられた、堂々たるキャッチコピーにいつわりのない性能により、ソアラは国産高級クーペとしてはひとり勝ちに近い人気を博していく。
そんなソアラ初代の一般発売日が、36年前のきょう、1981年2月27日なのだ。

それにちなみ、本日はソアラが重要な役割を果たすマンガ『シャコタン☆ブギ』をあげておく。

主人公は、顔も腕っぷしもイマイチだがいざという時の気骨は太い留年高校生「先パイ」こと「ハジメ」と、顔と気立てはいいが要領が悪い「コージ」の、同学年ながら先輩・後輩の関係にあたるコンビ。
男子校通いの2人は、とにかく女の子とつきあいたい・ヤりたい盛りで四六時中ガツガツしている。

農家のドラ息子であるハジメは、卒業後に家業を継ぐからと適当なことをいって親に頼みこみ、新車のソアラを買ってもらい、これをナンパの武器とする。
地面をカリカリこするほど車高を低く(車高短=シャコタン)改造したソアラに乗りこんだハジメ&コージは、夜の街にくりだしては目についた女の子にかたっぱしから声をかけていく。

ドライブに誘い、すげなくフられたり、ちょっといい雰囲気になりかけてはスケベ心をみせて結局またフラれたり。
ひっかけようとした女の子が彼氏持ちで地元の不良に追いまわされることもしばしばだが、ピンチはいつもソアラの走りで切り抜ける。
何度失敗してもめげない2人のナンパ生活はどこまでも続くのであった。

という具合に、1980年代における青春グラフィティを非常にわかりやすく表象したマンガである。

『湾岸ミッドナイト』の楠みちはる作品ということもあり、ポイントは、やはり自動車の存在感だろう。
ハジメたちのライバル「アキラ」はフルチューンのZ、整備士「ジュンちゃん」はワークス仕様のハコスカ、かつてすご腕のナンパ師だった「トシちゃん」は熱心な日産ファンでセドリックやブルーバード……登場人物はつねに彼らの愛車とセットで描かれ、多数のヒロインと多数の自動車がほとんど同じディテールの深さで読者に印象づけられる。

シリーズ途中から走り屋マンガの性格も備えていったことをふまえると、「主人公の目的」は女の子だが「作品の目的」は自動車、という二重性を見てとれるのがおもしろい。

かわいい女の子と、カッコいい車。
20世紀・1980年代における青春の“憧れ”が結ぶ焦点という意味では、同じ串で刺せる要素だったということだろう。

余談だが、本作はもともと、1984年から85年にかけて「週刊ヤングマガジン」で多数の漫画家がそれぞれ好みの歌をモチーフに読み切りを寄せる競作企画『歌謡漫画大全集』のために描き下ろされた短編が初出であり、それを第1話ということにして1986年から引き継ぎ連載が始まった経緯がある。
楠みちはるが選んだのはチェッカーズ「涙のリクエスト」(1984)で、第1話のサブタイトルおよび本編で同曲が引用されているのは、読み切り企画だった時のなごりである。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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