日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『とんがり帽子のアトリエ』
『とんがり帽子のアトリエ』 第1巻
白浜鴎 講談社 ¥610+税
(2017年1月23日発売)
どのコマを切りとっても、それが一枚絵のように緻密で流麗。
吹き出しや擬音表現さえ邪魔と感じるほど、美しいコマが連続している。
天使と悪魔のドタバタコメディ『エニデヴィ』でも、白浜鴎の絵のたくみさはきわだっていたが、ファンタジーの新シリーズ『とんがり帽子のアトリエ』は、「魔法世界」と「物語の主題」と「作者の画力」が一体となって世に放たれた。
ごく一部のかぎられた人間だけが魔法使いになれる世界。仕立て屋の母を手伝う普通の少女ココは、幼い日に「魔法の絵本」を買って以来、魔法使いになりたいと願っていた。
ある日、村を訪れた魔法使いの青年・キーフリーが魔法を使う様子をこっそりとのぞいてしまうココ。
それがとんでもない事態を呼ぶ……。
キーフリーに弟子入りし、自分が引き起こした状況をもとに戻そうと、一生懸命魔法と向きあうココ。児童文学のようなまっすぐな成長物語が展開される。
風をはらんで膨らむマント、魔法の力で柔らかく浮く水滴、曲がりくねった銀葉樹。
滑らかな描線がファンタジー世界を作り上げる。
じつは、作中での魔法はペンで魔法陣を描く方式。
きれいに描けば描くほど魔法の威力は増すという。
これは、現実のマンガにも通じる話ではないか。
「魔法使い=漫画家」、そんなふうに読むこともできる。
2巻以降、この部分がどう深まっていくのかも楽しみだ。
少なくとも、本作には読み手の視線をとらえる魔法がかかっている。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でファンタジー時評、「かつくら」でライトノベル時評を連載中。
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