日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『蛇沢課長のM嬢』
『蛇沢課長のM嬢』 第2巻
犬上すくね 小学館 ¥552+税
(2017年2月17日発売)
「今、このバラの花束で、私の顔を二度ほどぶってくれないか。」
イケメンでまじめ、エリートコースを走ってきたやり手の営業マン。非の打ちどころなし。
だが、部下の美々子の前でだけは、その本性を表す。
ドM。
社内で、美々子にボールギャグを渡して「今すぐ口にはめるように」と命令してくれ、気持ち見下す感じで、といい出す。
犬の散歩をしている美々子を見て照れる。「どうだろう、ひとつ私にも同じように命令を。」
ドン引き。ちょっとかっこいいなと思ったときめきは、全部吹き飛んでしまう。
美々子にはSの才能があった。
蛇沢がいろいろ無理難題を言ってくる時、それを追いかえすために厳しい言動を取る。
もちろん中途半端なけなしかたでは蛇沢が喜んでしまうので徹底的に。
「私にとっては間違いなくパワハラです。」
「土下座でもするつもりならやめてくださいね。
それすらプレイの一環にされちゃあ たまりませんから。」
この時、捨てられた犬みたいな潤んだ瞳で、絶望しかけた蛇沢の顔を見て、身体中ゾクゾクする美々子。
「この次はもっと冷たい声で辞めるって言ってやろう。
もしかしたら泣くんじゃないかしら。うわ どうしよ。」
彼女は、自分のSの才能に気づいていない。
ほかのだれかから厳しくされても喜ぶ蛇沢と、いらだつ相手ならだれでもけちょんけちょんにする美々子。
しかし第2巻では、そこに変化が出てくる。
美々子を脅かす存在が出てきてしまうのだ。彼女はなす術もない。
しまいには、蛇沢に抱きついて涙を流すほど。
これを見て蛇沢は、問題の根源にものすごい怒りで切りこむ。
「次に貴様らとこの辺りで出会ったら命がないと思えよ。」
自分たちの関係を崩すものには、容赦しない。
これが「恋」や「愛」なのかといわれると疑問は残る。
ただ「自分の素を出して受け入れてくれる、与えてくれる稀有な存在」という“割れ鍋にとじぶた”ではある。いっしょになれたら、素のままで生きられるよ。幸せなんじゃないかな。どうです美々子さん。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」