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『銀河英雄伝説』 第5巻 田中芳樹(作) 藤崎竜(画) 【日刊マンガガイド】

2017/03/06


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『銀河英雄伝説』


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『銀河英雄伝説』 第5巻
田中芳樹(作) 藤崎竜(画) 集英社 ¥514+税
(2017年2月17日発売)


田中秀樹による古典ともいえるスペースオペラ作品『銀河英雄伝説』のコミカライズ。作画は『封神演義』の藤崎竜。

『銀河英雄伝説』は、皇帝と貴族が支配する銀河帝国と、その支配から脱した自由惑星同盟との宇宙規模の戦争を舞台に、没落貴族出身で密かに皇帝を忙殺しようと企むラインハルトと、平和主義者でありながらラインハルトと互角の才能を持つヤンという2人を中心に語られていく物語だ。

原作小説はすでに完結しており、今回の藤崎竜版のほかにもマンガ化だけでも道原かつみ版があり(鴨下幸久がてがけたものもある)、アニメ化や舞台演劇化、ゲーム化もされるなど、多角的にメディア展開してきた。

今回の藤崎竜版コミックス第5巻は前巻から引き継ぎ、第3次ティアマト会戦から始まる。
ラインハルト率いる帝国艦隊によって、同盟国軍の若きホーランド中将の率いる艦隊が殲滅されるという壮絶な展開。あらためてラインハルトの圧倒的な才能が強調された。
この功績によりラインハルトは大将に昇進、皇帝より最新鋭の旗艦・ブリュンヒルトを下賜される。

首都オーディンに戻ったラインハルトはのちの部下となるミッターマイヤーとロイエンタールを救い、腐敗した大貴族たちとの対立をいよいよ深める。
他方、自由惑星同盟のヤンは国防委員長トリューニヒトの演説の好戦的な内容に辟易としていた。

第5巻後半は、第4次ティアマト会戦に向けて帝国軍と同盟軍が飛び立つ。
ラインハルトは大貴族の陰謀により、少ない戦力で同盟国に挑むことを命じられる。ヤンはヤンで、今回も愚将の配下でうんざりしながら被害を最小限にとどめようと奮戦しそうな感じ。

みずからの才能と勇気と運で銀河帝国と全人類の頂点を目指すラインハルトの躍進と、彼の理想のもとに精鋭たちが集結していく様子は胸が熱くなる。
とはいっても、平和主義なのに戦争に駆り出されるヤンのほうがやっぱり魅力的だ。『銀河英雄伝説』の原作は長大だが、藤崎竜版もできるだけ長く続いてほしい。藤崎竜の描く繊細なラインハルトが銀河皇帝になるところをぜひとも読んでみたい。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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Twitter:@n11books

単行本情報

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