日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『15で少女は、あれになる。』

『15で少女は、あれになる。』
江本晴 イースト・プレス ￥740+税
（2017年2月17日発売）

適齢期の女性を食料とする地球外生物「ホモニマ」の脅威に対抗するため、15歳になった少女に無害化したホモニマの因子（＝パクニマ）を植えつけることが義務化された近未来……というあらすじだけを書き出すと、昨今流行のSF異能力バトルマンガだろうか？　と思うかもしれないが、そうではない。

江本晴の『15で少女は、あれになる。』（イースト・プレス）は、そういった「まるで異能力バトルマンガ」とでもいうような荒唐無稽な生物兵器を植えつけられてしまった少女たちの内面にフォーカスした短編集なのである。

グロテスクで暴力的なパクニマの移植という「異常」が、当然の「日常」として受け入れられている社会において、少女たちの関心事は自分の周囲の人間関係がもっぱらだ。
彼女たちにとって地球外生物との命をかけた戦いは、恋愛や進学といったありふれた悩みと同等の……いや、それよりも優先度が低い、こなして当然の事象として扱われている。

圧倒的な能力を持つスーパーヒロインであふれかえった世界で行われる些細な青春の物語、この美しいねじれをぜひ一読していただきたい。

＜文・一ノ瀬謹和＞
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。