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『トレース 科捜研法医研究員の追想』 第2巻 古賀慶 【日刊マンガガイド】

2017/03/19


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『トレース 科捜研法医研究員の追想』


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『トレース 科捜研法医研究員の追想』 第2巻
古賀慶 徳間書店 ¥580+税
(2017年2月20日発売)


殺人事件現場に残る血液反応、胃の内容物の鑑定、DNA鑑定ではゴミ箱から回収したコンドームが渡されることも……。対象物がなんであろうと 「鑑定資料」を黙々と鑑定し続ける科学捜査研究所研究員たちのドラマ、注目の第2巻が刊行された。

悪を裁く正義のヒーローに憧れて科捜研に入った沢口ノンナは、想像以上に地味な毎日にいささかがっかり気味。要請を受けて事件現場におもむくこともあるが、日々の多くは研究所にこもりきり。
ひたすらに検査しては鑑定書類を作成する繰り返しである。

しかし、科捜研のエースと目される真野礼二とコンビを組むなかで、ノンナの意識は変わっていく。
仕事一筋すぎていささか変人にも思える真野だが、鑑定への並外れた熱意こそ正義のヒーローのものなのだと。

刑事と立場は違えど、鑑定は時に真相究明の最大の証拠となる。
また、刑事が見落とした可能性に、科学捜査官ならではの視野の広さで到達することもある。
真野はいう。「僕の主観に意味はない。鑑定結果は真実の欠片のひとつ。欠片を集めれば自ずと真実に近づく。それが死者への弔いで警察(ぼくたち)の使命じゃないのか」と。

じつはこの著者、元科学捜査官であり……現場を経験したからこそのリアルな描写はストーリーをさらに充実したものにしている。

様々な事件に関わるエピソードを綴りながら、本作の軸となっているのは真野礼二の過去だ。彼は23年前に起きた一家殺人事件の唯一の生き残りなのだ。
事件は長男が、両親と姉を殺して自殺したとして処理されたが……。
当時の状況が明かされていき、物語は真野の内心に少しずつ迫っていく。

真野が科学捜査官になった思惑は、そして彼は冷静な面持ちの下で何を考えているのか。
ヒューマンドラマとしてのうねりも読み手をひきつけてやまない、本格警察サスペンス。
ここからの展開に目が離せない!



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

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