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【スペシャル対談!】『ドラゴン桜』『インベスターZ 』の漫画家・三田紀房×実業家・大城太  ビジネスの本質が見えてくる? ゲーム脳と部活社会で未来を切り開け!

2017/05/26



ゲーム世代の「リスク感覚」

大城 私も若い世代へのイメージに関しては、メディア洗脳されていたかもしれません。FXに興味を持って私のところに来る若者たちに対しても、彼らはお金儲けということを安易に考えているから、そういうものに飛びつくんだと思っていました。先生のお話を聞くとどうも違いますね。

三田 彼らはゲーム世代なんですね。今の若い人たちは3、4歳の頃からゲームをやっていますから、物事を思考するときになんでもゲームに置き換える変換能力が身についていて、投資セミナーにいくのも、まず基本はゲーム感覚です。儲かる、儲からないというよりも自分の人生をゲームでいうとどうステージを上がっていくか、最終的にはゲームオーバーになるか、クリアの状態に持っていくかということを、ある程度頭のなかで変換していく「ゲーム脳」なんですね。

大城 『インベスターZ』でも最初に「これはゲームだ」というシーンがありました。

新規ドキュメント 2017-05-24 23.29.10

三田 ゲームとしてまず楽しむことが大事だと思うんです。リスク面でも、若い人はリスクを取らないとよく話題になるんだけど、意外と彼らはリスクが平気だと思うんですよ。だって、スーパマリオをやってると、何百回って失敗するわけじゃないですか(笑)。クリアして、また始めに戻ってプレイする。失敗してトライして……ということをハードに考えていない気がします。彼らは投資でもゲームとして捉えているところがあるので。もう少し先、10年後、15年後くらいになると、今の若者たちの間に、リスクを取ってビジネスをやる人が増えてくるんじゃないかと期待してるんです。


まずは思いきりバットを振れ!

大城 先生のような人気商売の場合もそうですが、これをやれば当たるだろうという、いわゆる求められているものを狙って当てていくことは考えるのでしょうか。

三田 僕の場合は当てにいくという気持ちになったことはないですね。当てるってつまり野球で言えばホームランですよね。ホームランを打つぞというイメージで打席に立っても、ホームランを打つことが最初にあると、力んだり、いい球を待ったりして、なかなかバットを振れない気がするんですよね。どうしても当てるための方法を考えちゃう。僕が大事にしているのは、打席に立ったらまず思いきってバットを振るということです。できれば初球を、ボールでもいいから思いきり振る。当たって打球が飛んでホームランだったらうれしいけど、空振りでもそれはしょうがない。自分の納得したスイングができたならそれでいいと思うんです。

大城 結果よりまず行動のほうを、ということですね。

三田 やるべきことを100パーセントやるということですね。思いきりバットを振るということは、『インベスターZ』で言うなら、中学生が投資するなんてまずほぼありえないわけです。ぱっと読んで「子どもがやるの?」と思うところでもうおもしろいわけですから。結果的にヒットになれば、自分のスイングが間違っていなかったということになるんです。まずは振る、ということです。


日本は部活社会!?

大城 先生が作品中で「迷うことはあっても、やっぱりやることはやりなさい」というメッセージを出されています。私の世代(40代)でも、いまだに自分探しとか言っている人たちが思いのほか、多いんですよ。まだ迷っているんです。この人たちはどうすればいいと思いますか?

三田 日本人はみんな準備が好きなんですよね。大きく飛ぶためには完璧な助走をしないといけないとみんな思うわけですよ。そのベースにあるのは部活なんです。部活って日本独特のシステムなんですよ。朝学校にいって授業を受けて終わって部活で学校に残って練習する、ほぼ1日丸ごと学校にみんなでいる国はほかにないんです。アメリカなんかだとみんな帰っちゃって門を閉めたら無人という状況を早くつくりたいんです。安全上の問題もあって学校にいられると迷惑なんですよ。日本はまだ安全な国なのでずっと学校にいても許しちゃうんですよ。日本人って中学時代から部活人生を送っているので、練習が好きなんです。一年中、朝から晩までずっと練習して大会に出て結果がわかるというシステムにどっぷりつかっていると、成果を得るためにはまず練習だということになる、先生から一生懸命練習しろ、練習は嘘をつかないとかやかましく言われますし。だから部活というシステムをもうちょっと変えれば、日本人のメンタリティーって変わってくると思うんですよ。

大城 頭のなかが部活イメージになってしまって、とにかく練習するんですね。

三田 たしかに練習が大事というのは、ひとつの正論で、特にスポーツだと、欧米人と体格が違うので、欧米人の3倍練習しないと彼らのレベルに追いつかないのはしょうがないこと。だから、何かを始めようとすると、必ずそのためのトレーニングを始めるんですよ。まず教材を買って、自分なりにトレーニングを積んで、その結果、ある程度のレベルに達してからその道に進むというのが、日本人特有の物事を進める計画みたいにできあがっているんです。自分探しもそうなんですけど、結局何かをしようとすると、そのための準備から入るんで、助走が長くなる。助走しているうちにだんだんテンションが落ちてきて、練習疲れしちゃって、本番前に何か違うかな、ってまた別の道を探すという。

大城 部活に影響されている社会人も日本には多いんでしょうか?

三田 日本の会社組織が部活そのものじゃないですか。新入社員は新人部員、野球部の1年生みたいなものです。入部(社)して先輩後輩関係があって、課長や部長は部活のキャプテンに当たるでしょう。日本の会社って年代順に組織立っています。だから大学を出て社会人になっても、新しい部に入ったようなものなんですよ。入るとすぐにみんなで飲み会やろう!ってなる。飲み会ではキャプテンが「いいかお前ら」って説教するのをみんなで聞いて、新人も聞いてそれに頷いて、最後にはチームみんなでがんばろうとなるんですね。ずっと部活として人生を送っていくんです。

大城 『インベスターZ』でも先輩から後輩へ代々と受け継がれていくことが、すんなり入っていくんですね。

三田 そう。だから『インベスターZ』は「投資部」という部活にしているんです。ああいう組織のほうが日本人は能力を発揮しやすい環境なんですね。

大城 下手にアメリカ式の業績給とか、フレックスタイム制とかは入れないほうがいいということですか。

三田 やってみても失敗したんじゃないですか。90年代に竹中平蔵なんかが、いわゆる国際標準に日本の組織を改めようってやりましたよね。政府が言うからって大企業が試したけど、なかなかうまくいかなくて、みんなやめちゃいました。日本人の一番機能しやすい部活組織に改めるとやっぱり力を発揮できるんですよね。こればっかりは完全に染みついたものなんです。

大城 DNAレベルで(笑)。

三田 ええ。だからおそらく小中高の教育システムを全部変えないかぎり、変わらないでしょう。


サラリーマンは諦める速さを身につけよ!

大城 最近減ってきてますが、10年以上自殺者が3万人を超えていたなかには、零細企業(中小企業のなかでとくに小規模なもの)の経営者だったり、そこそこの企業の中間管理職が多いと言われていました。サラリーマンのなかで、中間管理職が一番苦しいというのはよく聞くんですけど、結局は板挟みになって上からは命令される、下のコントロールの仕方はわからない、結局自分はリーダーなのかリーダーでないのかもわからなくなってしまう。課長クラスであれば、社内にもたくさんいて、これから次長部長になって役員を狙っていくのか、課長で終わってしまうかの瀬戸際で苦しんでしまっている同級生がたくさんいるんです。私は30歳すぎに起業しましたので、彼らにどのようなメッセージを伝えてあげればいいのかわからないんです。

三田 サラリーマンは40代の中盤から50代後半までをどううまく切り抜けるかが勝負どころなんです。企業って50歳以上になると急激に人が余るので、大企業だとバンバン、子会社に飛ばしていくんです。僕の年代でも50歳を超えると同期の4分の3以上が子会社出向ですよ。本社に残って役員まで行けるのは10パーセントもいないわけですから。やめて起業するとしたらそこは勝負どころですよね。でも一般企業に入って、入った会社で勤め上げる場合、ほぼ系列会社に流れていって、そこで定年を迎えるというのがひとつのパターンです。

大城 心の持ちようで、出向になったとしても「そこで自分の経験したいことができる」とか、「居場所がある」とか、あるいは「働くのが嫌いだから朝から新聞読んでても怒られない環境がいい」とか、そんなふうに思えない人が多いんじゃないかと思うんです。負けたんじゃないかと思ってしまう。

三田 わかりやすく言えばプライドが高い人ですよね。高学歴で、サクセスしてきた人はそういうタイプです。最近実際にあったことなんですけど、僕の知人ですごい野心家だった人が、ある大企業で順調に出世して、ほんの2年くらい前までは役員を目指すと言っていたんですよ。つい最近会って「仕事はどう?」って聞いたら、「いやもう定年まであと3年だから、定年なったらさっさとやめる」って言うんですよ。しかも、ハワイにコンドミニアムを買って、定年になったら奥さんとむこうで暮らすというんです。完全にリタイアするための準備を着々としているんですね。人ってこんなふうに変わるんだなって思いましたよ。つまり、彼は承認欲求を全部捨てたんです。「もう人からどう見られるとかどうでもいい! 自分のために生きる」と思いきってチャンネルを切り替えたら、もうサバサバしているんですね。

大城 ある意味潔さを感じます。

三田 要するに、諦めの早さみたいなものは、僕はこれからの日本人にすごく大事だと思うんですよ。日本人ってよく諦めるなって言うし、みんな強く思いすぎているところがあるんですね。僕は逆にさっさと諦めろと言いたいです。諦めてチャンネルを切り替えたほうが、自分のために人生をエンジョイできると思います。そこでなんとかしようって格闘しすぎると、40代後半から50代中盤はものすごく苦しい。だからもっと、さっさと辞める社会になったほうが、僕は日本人のためになるんじゃないかと思うんですよね。

大城 新卒で入ったところから、40歳すぎて会社を変えると、給料がガクッと下がっちゃうことに躊躇している人が多いんじゃないかと思います。

三田 収入に関して言えば、結局何が足かせになるかというと、「家庭」ですよね。でも、「家庭と自分のどっちが大事なの?」ってことですよ。体調を悪くしてまで家族を守らないといけないのか、家族のために収入を減らせないということで、無理をして精神的にダメージを受けて、精神的疾患になったりするわけです。家族全員の経済なんてなんとかしようと思ったら、なんとかなるわけです。「お父さん、お給料下がったよ」と言えば、子どもは子どもなりに考えて大学を選んだりバイトをしたりするでしょう。子どもを信じてあげていいと思うし、家族同士、「みんなでがんばろうよ」とお互いを信頼し合える環境をつくれればいい。「どっちを取るの」って言われたら、自分を取るような社会環境になってほしいです。何よりも健康が大事、それが結論です。

三田紀房先生と大城太氏のスペシャルな対談! 成功のヒントがたくさん明かされた!

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取材・構成:神田法子


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