『インベスターZ』第1巻
三田紀房 講談社 \571+税
2008年9月15日、アメリカの投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が破綻。それが引き金となって、世界的な金融危機や不況が起きてしまった。いわゆる「リーマン・ショック」である。
日本もその影響をモロに受け、なにかとどんよりした経済状況が続いていたことは記憶に新しい。
しかし、「リーマン・ショック」という言葉は聞いたことはあっても、いったいそれって何? となると、薄ぼんやりとしかわかっていない人も少なくないかもしれない。それというのも、経済や投資といった話題が今ひとつ興味の対象になっていないからだろう。興味さえ持てば、なかなかエキサイティングな世界なのだが……。
というわけで、まったく投資のことになど興味がなかった人にこそ読んでほしいのが『インベスターZ』だ。
作者は、落ちこぼれの高校生が東大を目指す『ドラゴン桜』で知られる三田紀房。『ドラゴン桜』でも古文に対する苦手意識を払拭するために、まずマンガでストーリーを知ってしまおうというくだりがあったが、まさしくそれを『インベスターZ』で実践しようというわけだ。
本作に登場する道塾学園は、表向きは「入学金ゼロ、授業料タダ」となっている中高一貫の名門校。全部無料のカラクリは、成績最優秀の生徒が所属する「投資部」が秘密裏に資産運用を行って、すべての費用を捻出している学校運営にある。
トップの成績で入学した中学1年生の主人公・財前孝史は、どちらかといえば部室で行われているマージャン目当てで入部するも、まったく知識ゼロから投資のおもしろさを知っていく。
まさに株や資産運用なんてものにはからっきし縁がなかった人にこそ開かれているマンガで、設定や登場人物などは荒唐無稽でぶっ飛んでいるが、そこで語られる経済にまつわる話は現実社会でも通用するもの。
これを読むと、これまではあまりピンとこなかったかもしれない数々の経済ニュースが、一種の「娯楽」へと変わるかもしれない。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。