『舟を編む』のおかげで完全におじいちゃんにハマってしまった!?
――『舟を編む』は短期連載、上下巻での完結とのことで、現在、ゴールが見えてきたと思いますが、すでに次回作の構想はありますか?
雲田 うっすらと。私はテーマではなくキャラクターから考えるほうなんです。キャラクターが浮かんできて、そのキャラを活かすにはどういうストーリーにしたらいいのかなと考えてつくることが多いです。
――キャラクターができてから、先生の興味のあることとリンクする?
雲田 そうですね。キャラクターにあった舞台だったりストーリーだったり……。
――今、どんなことに興味を持っていますか?
雲田 けっこう前からですが、ドキュメンタリー番組が好きですね。数学者の方に迫ったドキュメンタリーとか。私はまったく理系の脳ミソはないんですけど、ないからこそひかれるのかも。いいキャラのおじいちゃんがいるんですよ……。森にこもって数学の解析に打ちこんでいるような。マンガにする予定とかはなくて、ただ好きで見てるんだけなんですけど。
――ドキュメンタリー番組は変人の宝庫?
雲田 そそうですね。数学者、科学者、研究者などのドキュメンタリー番組を見る事が多いです。辞書編集部の人にも似たものを感じますが、ひとつのことにずっと打ちこんで極めている職人のような人。ここにこんなに素敵な物語があるって気付いた三浦さんは本当にすごいです。
――勝ち負けがつくわけでもなく、正解が出ないかもしれないことに人生を賭けているような。
雲田 職人さんもおもしろいですね。あ、落語もここに通じますかね。江戸の文化を好きになったのは、かつて三谷幸喜さんの『新選組!』というドラマを見たことがきっかけだったんです。新選組と落語は全く関係ないんですが(笑)あのドラマを通して、とてもいい体験ができました。
――ちなみに子どもの頃から好きな男性キャラは?
雲田 萩尾先生がまた連載をやってくださってるので、『ポーの一族』のエドガーブームがきています。エドガーって、見た目は美少年なのに中味がおじいちゃんで。そのギャップがいい。こんなこというとエドガーファンに怒られるかもしれないけど、そんな所が彼の魅力だと思っています。
――おじいちゃん風味が好きな素質があったんですね(笑)。
雲田 『舟を編む』の挿絵がきっかけで、今は完全におじさんのかわいさ、おじさんを描くよろこびに目覚めました。『舟を編む』の松本先生みたいなおじいちゃん、好きですね。知性があって色気もあって、年をとっても柔軟で。人の尊敬を集める方。
――松本先生、ホントにかわいいですよね! そういえば雲田先生、それ以前におじいちゃんキャラって描いてました?
雲田 主要キャラではまったくなかったです。それまではBLしか描いていませんでしたし、BLでおじさんが出てくる作品って、当時はほとんどなかったんですよ。ともかく、私がおじさんやおじいさんを描く楽しさに目覚めたのは『舟を編む』の挿絵のおかげです。三浦さんによって開拓されたんですね。挿絵連載の途中から『落語心中』を描き始めるんですが、八雲師匠を描いてみたいと思ったのも、おじさんを描くのがこんなに楽しいなら、ご年配の主人公でもいけるかも、と思ったからで、『舟を編む』からはいろいろ影響を受けていると思います。
――欲を言えば、ぜひ松本先生の若い頃のエピソード、見てみたいです。スピンオフ、いかがですか?
雲田 三浦さんに黙ってスピンオフ。それって同人誌ですね(笑)。そう、松本先生って荒木さんのことだけ「荒木くん」って呼ぶんですよね。他の人には「まじめさん」「西岡さん」なのに。若い時分からの時間経過を感じて、そこもいいなぁと。「舟を編む作中での、相手の呼び方」は三浦さんのこだわりだろうなと感じます。それぞれの一人称の使いわけなんかも。
――三浦先生の同意が得られればぜひ描いてほしいです!
雲田 まあ、まずは『舟を編む』完結に向けてがんばりますので、まずは単行本第1巻を楽しんでいただけたら、うれしいです。
取材・構成:粟生こずえ
『舟を編む 上巻』
三浦しをん(作) 雲田 はるこ(画) 講談社 ¥620+税
(2017年7月7日発売)
■次回予告
次回のインタビューでは、ファン待望の新作『舟を編む』について、た~~~~っぷりうかがいます! 直木賞作家・三浦しをん先生のつくりだす世界観をビジュアル化するには……雲田先生のマンガづくりの裏側に迫ります!!
インタビュー第2弾は、7月10日(月)公開予定です! お楽しみに!
雲田はるこ先生の大人気作『昭和元禄落語心中』も紹介している
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