洸と双葉の“事故チュー”は先生自身の体験から!!
――咲坂先生が実際にマンガを描き始めたのはいつごろですか? どんなお話を描いていましたか?
咲坂 初めてマンガを描いたのは、社会人になってからなんです。投稿する目的で。今と変わらず恋愛マンガでしたね。
――中学〜高校生時代はどんな女の子だったのでしょう。“青春”を何に懸けていましたか?
咲坂 人見知りだけど慣れると図々しくなってしまうヤツです。高校の頃は「たくさん友だちと遊んだり恋しなくては」と思っていたので部活には入らないと決めてました。
――まるで、先生の作品を地で行く感じじゃないですか!
『アオハライド』というタイトルは“青春(アオハル)+ride(乗る)”から作った言葉だそうですが、咲坂先生が「青春」に欠かせないと思う要素は?
咲坂 恋愛、失敗、一生懸命、盲目……かな。
――作中で、先生ご自身の青春時代の経験にもとづいたエピソードはありますか?
咲坂 洸と双葉の“事故チュー”ですね。
――え! ホントにあるんですか、たまたま顔を向け合ってキスしちゃうなんて……。
咲坂 それがあるんですよ。あんなにクリーンヒットするなんて……(笑)。こんなことって本当にあるんだ〜、となかば感心したのを覚えてます。
――「こんな青春を経験したかった」と思うことはありますか? すでに『アオハライド』で描いたシーン、これから描いてみたい青春シーンを教えてください。
咲坂 放課後の教室でのキスは憧れでしたね。私は残念ながら経験がありませんが、絵的にもいいなぁと思っていたので描いてみました。描いていてやっぱり楽しかったです!
――マンガはけっこう読んでいましたか? やっぱり少女マンガ育ちですか?
咲坂 そうですね。いちばん最初にハマったのは『ときめきトゥナイト』(池野恋)[注5]で……小学生の時です。漫画家として影響を受けているなと思うのは、いくえみ綾さん[注6]、河原和音さん[注7]、冬野さほさん[注8]、かわかみじゅんこさん[注9]……などなどです。
――漫画家としてのご自分をどう思いますか?
咲坂 この仕事に対してはすごくまじめに取り組んでいると思うので……漫画家になってから「自分にもそういう部分があったんだ」という発見がありました(笑)。「好きなことしか描けない」と思う気持ちはデビューの時から変わっていませんが。
――今後、挑戦してみたいタイプの作品はありますか?
咲坂 いつかもう少し大人の恋愛ものも描いてみたいです。リアルで痛々しさ増し増しなやつ。
――それは……すごく読みたいですね!! 咲坂先生の人間心理や行動の鋭い観察眼で大人の恋愛を描いたら、とても濃い作品になりそうです。
『アオハライド』が「このマンガがすごい!2014」オンナ編17位にランクインしたことについてのご感想はいかがでしたか?
咲坂 もっともっとがんばろうと思いました。ありがとうございます!
――前作『ストロボ・エッジ』の10巻を超え、先生にとって最長の作品になる『アオハライド』、これからの見どころを差しつかえない範囲で教えてください。
咲坂 長崎の修学旅行を終えて、何かを吹っ切った洸の反撃に、冬馬がどう応戦するのか見ていただきたいです。
――では最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
咲坂 『アオハライド』は王道恋愛マンガですが、それゆえに心の機微を大事に描いているつもりなので、そういう微妙な感情の揺れを楽しんでいただけたらと思います。自分の描いたものに共感していただけて、おもしろいと言っていただけるのは本当にうれしいんです。よろしくお願いいたします!
- 注5 池野恋による大ヒット恋愛ファンタジー。1982年から1994年まで「りぼん」(集英社)にて連載され、1982年にはテレビアニメ化もされこちらも大ヒットした。第1部の主人公・江藤蘭世、第2部の主人公・市橋なるみ、第3部の主人公・真壁愛良と、特殊能力を持つ世代の異なる3人のヒロインによる3部構成になっている。2013年には前編書き下ろしの新作『ときめきトゥナイト 真壁俊の事情』(集英社)が発売され「このマンガがすごい2014」オンナ編2位にランクインするなど大きな話題となった。
- 注6 女性漫画家。代表作に『バラ色の明日』『潔く柔く』などがある。『潔く柔く』は2013年に長澤まさみと岡田将生主演で実写映画化もされた。
- 注7 女性漫画家。代表作に『先生!』『高校デビュー』など。『高校デビュー』はコミックスの累計売り上げが600万部を超えるというメガヒットとなり、2011年には溝端淳平と大野いと主演で実写映画化された。
- 注8 女性漫画家、イラストレーター。スタイリッシュな絵柄と独特のコマ割りでコアな人気を集める。現在は主にイラストレーターとして活躍。なお、夫は同じく漫画家の松本大洋。
- 注9 女性漫画家。『FEEL YOUNG』(祥伝社)にて4コマ漫画「パリパリ伝説」、総合文芸誌『ダ・ヴィンチ』(メディアファクトリー)の付録にて「長女だからって。」、『Cookie』(集英社)にて「日曜日はマルシェでボンボン」を連載中。
次週、10月3日は『透明人間の恋』の安藤ゆき先生が登場予定! お楽しみに!
取材・構成:粟生こずえ