ルンルン作品で育った読者たち
――『オリオン街』や、テレビアニメ化もされた『マシュマロ通信』[注6]など、「朝日小学生新聞」の連載を子供の頃に読んでいたという人たちは、いま多くが20代に入ってきています。はじめて読んだマンガが山本先生の作品だという人もたくさんいるでしょうね。
山本 それ、ほんとにすごいことですよね! 気が遠くなります。
――「マンガってこういうことだな」って、読者が教育されていっていると思います。小学館の学年誌で連載していた時の『ドラえもん』のような……。
山本 すごく責任重大ですよね。初めて読むマンガが私のマンガだったりするかもしれない。そんな子に「マンガっておもしろいな」って思ってもらえるようにがんばっています。
――山本先生の場合、リアルタイムで読者に2本の線があるのがおもしろいですよね。現役で「朝日小学生新聞」を読んでいる小学生のファンもいれば、昔『マシュマロ通信』のアニメを観ていた子が、今『ないしょの話』にはまったりして。
山本 漫画家として、本当に特殊な道を来ちゃったなと思ってます(笑)。ただ、「朝日小学生新聞」以外、メインの掲載媒体というものを持っていないので、読者の皆さんからすれば、「今どこで描いているんだろう?」って感じですよね。
――でも、ここ数年にかけて、『ないしょの話』に加えて、『マシュマロ通信』の未収録作を集めた単行本が2冊[注7]、連載中の『はずんで! パパモッコ』[注8]が1巻から順々に刊行、それに宝島社からも復刊の『シトラス学園 キューティ』『シトラス学園 バニラ』が出て……ファンはうれしい悲鳴だったのでは?
山本 ありがたいですよね。ずっとちょこちょこ描いていたものが、ようやくまとまって。『ないしょの話』は、新書版サイズで出したのがはじめてだったので、(値段が)安く出せたのが、すごくうれしかったです。今までは、オールカラーだったりワイド判だったりして、値段がちょっと高くて読者の皆さんに申し訳なかったんですが、これは500円以内で買えるので。
- 注6 2004年から2006年まで「朝日小学生新聞」に不定期連載されていた山本ルンルンのフルカラーマンガ。生きているぬいぐるみ・クラウドと、マシュマロ学院の新聞部メンバーの日常を描く。2004年にアニメ化もされた。
- 注7 復刊ドットコムから限定販売された『more more マシュマロ通信』と『Bye Bye マシュマロ通信』の2冊を指す。2冊とも、単行本未収録分と新作描き下ろしが収録されている。
- 注8 2012年から「朝日小学生新聞」で不定期連載中の山本ルンルンのフルカラーマンガ。事故の影響でぬいぐるみ・モッコの姿になってしまった発明家の父と、娘2人の不思議な生活が描写される。