携帯やパソコンが衰退した近未来。少女漫画家ヤコとロボットアシスタントのポコのなんでもないけどあたたかい毎日。『花とズボラ飯』で鮮烈なデビューを飾った水沢悦子先生の新境地ともいえる『ヤコとポコ』は、どこかなつかしく、ちょっぴりせつなく、とっても癒されるすこし不思議な世界。かわいいキャラクターもてんこもりで、幅広い読者の心をわしづかみ中! 読むとなんだか気持ちが軽くなる――そんなほのぼの異世界ショートをつくりだした水沢先生にお話を伺いました!
「ダメモード」のよさも 感じてほしい!
――『ヤコとポコ』の構想はどのようなアイデアからスタートしたのでしょう。
水沢 新雑誌の準備号の依頼で、当初は「ささやかなエッセイマンガ的なものを」というお話をいただきました。いろいろ思うところあって、ノンフィクションはやめて、少女漫画家が主人公の話にしたんです。
――少女漫画家のヤコは、見た目はほわっとしていますが、堅実で地に足のついた感じですね。
水沢 花(『花のズボラ飯』)がよくしゃべる子だったのでヤコはあまりしゃべらない子にしようと思っていました。考え方など自分に似てる部分もけっこうあります。
――むやみに仕事を増やさないなど、「ガツガツ求めない」態度にホッとします。
水沢 自分のなかに、連載を1本に絞ってじっくりゆっくりやっていきたいっていう気持ちと、いろんな仕事をかけもちしてバンバン描いてる作家さんに憧れる気持ちもあって。それをヤコとオリーブ先生にわけてみた感じです。
――そして、ネコ型のロボット、しかもおなかにファスナーもありますし……ポコから『ドラえもん』を思い浮かべる読者も多いかと思いますが?
水沢 ドラえもんは意識してたかどうか、あまり覚えてないですけども、絶対してたと思います。
――「かんぺきモード」「てきとうモード」「ダメモード」から持ち主が設定を選べるのがおもしろいです。それぞれの魅力が伝わってきてなんだかホッとします。
水沢 じつは1話目のポコのモードを選択するコマはささやかなギャグのつもりで描いたので、それぞれのモードのルールとか深く考えてなかったです。ちゃんと考えてたら「ダメモード」なんていう名前にはしないです(笑)。
あとから考えると「ゆったりモード」とか「のんびりモード」とかほかにもつけようがあったと思います。そんな感じで2話目から本気でこの世界のことを考え始めたので、「ロボットの性格とかはどういうふうに決まるのか」などの細かい仕組みもあまり考えてなかったです。2話目からいろいろ説明しているつもりですが……「ロボット屋さん」的なものもまだ描いてないですしね。どうなってるんでしょうね?
――それは登場が楽しみです(笑)。動物ロボット欲しい、という声は多いのでは?
水沢 読者の方からの感想で「かんぺきモード欲しい」「てきとうモード欲しい」という声はよく聞きますが……ダメモードの人気も高まってくれるといいですね。なんとなくがんばりすぎてる人が多い時代のような気がするので。
――モードが同じでも、性格はそれぞれなのもいいですね。
水沢 ロボットの性格はいろいろですが、ご主人への忠誠心だけは強めだと思います。でもポコはたまに口ごたえしてますね。
――ポコは、ヤコのアシスタントではありますが、小さな弟みたいですよね。
水沢 ヤコにとってのポコは「大切にしているなにか」くらいに思ってもらえるといいなと思います。もちろん単純に「大切な人」でもいいですし。ロボットは甘やかしすぎると働きが悪くなるので「絶妙な距離感を保たないといけない人」でもありますかね。そこに、「仕事をしていくうえで絶対に譲れないこと」などをからめて描いていこうと。
――ポコは時にめんどくさかったりもするけれど、ヤコの役に立とうとしているのが、いじらしいです。
水沢 ヤコの邪魔をしないように気をつけてるし、邪魔してないつもりだけど邪魔になっちゃってる感じ。まあ、一緒に暮らしてたらどうしてもそうなるだろうと思います。ヤコは「でも許す!」……ってなるように意識してます。ヤコはポコを大切にして生きていくと決めていて、ポコがつらくなりすぎない仕事量にしているのです、たぶん。これも2話目からちゃんと考えたことですけど。ヤコとポコの出会いは、大切なところなのでいつかきっと描きます。なんとなくですが、考えてはいます。