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水沢悦子『ヤコとポコ』インタビュー ネコ型のロボットは『ドラえもん』を意識していた!?

2015/11/09


携帯やパソコンのない近未来世界こそ 究極の理想郷!?

――近未来の“携帯やパソコンの衰退した世界”という世界観は新鮮ですよね。

水沢 1話目を描いてから2話目まで半年くらい時間があって、そこでやっと世界観をちゃんと考えたのですが。当時の担当とSNSのことをいろいろ話していて「いや、でも絶対みんなソーシャル疲れしてるって! そういう人たちにしみる世界がいいと思う〜」みたいに盛りあがりまして、ああいう世界になりました。

風呂敷をかけられちゃっているほどパソコンが使われていない世界。検索キーワードを調べているのは人力で10分もかかるローテクぶり。

風呂敷をかけられちゃっているほどパソコンが使われていない世界。検索キーワードを調べているのは人力で10分もかかるローテクぶり。

――しみてますよ!! ネットの恩恵にあずかりつつも、個人的には「こんなものなかったほうが楽かも」と思うこともあり、『ヤコとポコ』の世界は理想的に感じます。

水沢 ちょっとヒヤッとしたのは、連載前に描いた設定資料だと、ヤコの机の上に携帯電話が描いてあるんです。これを1話目で描かなくてよかったなーとホッとしました。その時点ではまだ携帯電話がない世界にするなんて考えてなくて……単純に描くのがめんどうだったからサボっただけなんですけども本当よかったです。優秀なアシスタントがいたら絶対アレを描いちゃってたと思うんで。

――建物など町並みもとてもかわいくて素敵ですよね。

たけのこ、きのこ、ティーカップ。こんな建物がたくさん! 道路標識もネコだし超ファンシー。なのにちょっとノスタルジック。

たけのこ、きのこ、ティーカップ。こんな建物がたくさん! 道路標識もネコだし超ファンシー。なのにちょっとノスタルジック。

水沢 背景を描くのがとてもつらいので、少しでも楽しんで描ける背景にしました。線も太めにしてコロコロした感じのほうが描きやすいし、かわいいし。定規を使って背景を描く術を学ばないままここまで生きてきちゃったのも、逆によかったのかなとか思いますし。
「自分にしか描けない町並み!」みたいなことを意識しています。そう思い込まないとやってられないですので。と、まあいろんな理由が重なってああいう世界ができたわけですが、気に入ってます。未来のことは誰もわからないですし、自由でいいです。

――それにしても……読むにつけ「ゆっこペン」が欲しくてたまらないです。ストーリーの軸にもなっているこのペンの設定はどのように思いついたのでしょうか。

いったいどんな色が出るのかとっても気になる「ゆっこペン」。これは集めたくなる。

いったいどんな色が出るのかとっても気になる「ゆっこペン」。これは集めたくなる。

水沢 ちょうどお話を考えてる時にパイロットの「ハイテックCコレト」[注1]が発売になって。それで「今までのハイテックCがなくなってしまうのかも」と心配になっていろんな色を集め始めたのがきっかけだと思います。
結局、通常のハイテックCは今でも全然売ってますので安心でしたけど。ハイテックCの古いシリーズで「べんがら」と「べにふじ」っていう色があるんですが、これがほとんど同じ色だったのです。キャップが入れ替わってても気づかないレベルで。それで「色の名前ってなんだろうな。言った者勝ちだな」……と思ったことから、「ゆっこペン」を考えました。

――「ゆっこペン」商品化企画のお話はないのでしょうか?

水沢 チラッとあったけど実現はしなかった感じです。商品化したら本当にうれしいですけど、キャップの形が色によって違うのはちょっとまずかったかなーと思っています。難しそうですよね。

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色の名前の素敵さもさることながら、キャップのデザインとか、なにもかもかわいい。

色の名前の素敵さもさることながら、キャップのデザインとか、なにもかもかわいい。

――あっ、たしかに。「ゆっこペン」を思いのままに商品化するとしたら、何色展開したいですか? 絶対に入れたい色はありますか?

水沢 24色くらいでしょうか。そんなに色の名前が浮かばないかもしれないですが。これから先、自分自身が色の名前に無理を感じてきたらもう終わりたくなるような気がするので、少〜しずつ出していきたいです。絶対入れたい色は「好きだった男子の家の屋根色」です。

――この先、ゆっこさんが登場する予定は?

水沢 まだ考えてないですけど、いい感じに登場させられたらいいですね。ペンを全部集めたらゆっこさんが現れて願いごとをかなえてくれるとか……それは絶対ないかな(笑)。

昔話の登場人物のようなメルヘンオーラを漂わす、ゆっこさん。ポコとのからみが見てみたい。

昔話の登場人物のようなメルヘンオーラを漂わす、ゆっこさん。ポコとのからみが見てみたい。

――「ゆっこペン」のひとつひとつ、建物や乗り物などすべてファンタジックで、コマをすみずみまで見るのが楽しいです。こうしたデザインセンスが、どんなものから影響を受けて育ったのか気になります。 

水沢 どちらかというとマンガよりゲームで育ってきたところがありますので、そっちからの影響かもしれません。具体的にどの作品とは言えないですが。ゲームにはマンガ以上に世界観や設定がぶっ飛んでる作品が多い気がします。昔のゲームなんか特に。なので、そっちで育ってきてよかったと思ってます。以前はゲームやりすぎだった人生を悔やんでいましたが最近は前向きです(笑)。

――2巻に収録されてる『おしえて。ポコ先生』[注2]は“ゲーセンの過ごし方編”ですが……本作に出てくるゲーセンはどことなくノスタルジックでいいですね。

『おしえて。ポコ先生』“ゲーセンの過ごし方編”のうち11話「メカ金魚すくい2」。ものすごいツンデレっぷりのゲームにときめく。

『おしえて。ポコ先生』“ゲーセンの過ごし方編”のうち11話「メカ金魚すくい2」。ものすごいツンデレっぷりのゲームにときめく。

水沢 自分も子どもの頃はしょっちゅうゲーセンに行ってました。ゲーセンって悪いイメージもあると思いますが、あれはあれで勉強になることも多い場所なんです。『おしえて。ポコ先生』に経験をいかせてよかったです。

――ゲームは今でもやりますか?

水沢 はい。時間があればですが……もうじき発売する『モンスターハンタークロス』[注3]はやりたいですね。武器はずっと大剣を使ってたのですが、今回いろいろカッコよさそうなのでほかの武器に変えるかもしれません……でも結局大剣かも(笑)

――水沢先生、ありがとうございました。

取材・構成:粟生こずえ

●次回予告
謎多き漫画家・水沢悦子先生。先生の漫画家としての師匠は○○!?

  • 注1 ハイテックCコレト パイロットが出しているボールペンで、ボディやインクの色を自分で選べ、インクの入れ替えができるのが特徴。ボディは2色用から5色用まであり、インクは全15色。インクのほかにシャープペンや消しゴムのユニットもあるすぐれもの。
  • 注2 『おしえて。ポコ先生』 月刊「エレガンスイブ」で不定期連載中の『ヤコとポコ』の出張版。Webコミック「Championタップ!」にて2013年7月4日から配信中。
  • 注3 『モンスターハンタークロス』 2015年11月28日に発売予定のニンテンドー3DS専用ゲームソフト。11年目となるモンハンシリーズの新機軸となる“ハンティングアクション”が誕生するということでファンの間で話題に。

単行本情報

  • 『ヤコとポコ』1巻 Amazonで購入
  • 『ヤコとポコ』2巻 Amazonで購入

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