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『ゴールデンカムイ』野田サトルインタビュー ウケないわけない! おもしろさ全部のせの超自信作!

2016/01/04


ヒンナヒンナなアイヌ料理

——作中ではかなり料理や食事の場面をしっかりと描きこんでますよね。

思わず「今日の夕飯は……鍋にしよう」と思ってしまうほど、おいしそうな鍋! 「リスの肉団子」という未知の食材が、また食欲をそそる!

思わず「今日の夕飯は……鍋にしよう」と思ってしまうほど、おいしそうな鍋! 「リスの肉団子」という未知の食材が、また食欲をそそる!


野田 先ほど言ったように、構想の初期段階から「狩猟」というキーワードがあったんですね。狩猟というのは、捕まえて肉を食べて、毛皮や骨などを生活用品に利用したり、売ってお金にしたりするまで、すべてくっついているものだと思います。だから料理描写は必然でした。

——なるほど。アイヌ文化の豊穣さがわかるので、個人的にはアシパさんの料理シーンはとても楽しみにしています。

野田 アイヌを調べていくうえで、食文化は無視できないおもしろいものでした。食器とかもデザインがいいので、ぜひ細密に描いてみたかったですね。

こうした小物なども、先生は、実際に資料として集めていらっしゃるとのこと。

こうした小物なども、先生は、実際に資料として集めていらっしゃるとのこと。


——多くの読者が、本作の料理シーンを見て「うまそう!」と感じてます。

野田 チタタという言葉の響きが受けたと思います。「ヒンナ」とか「オソマ」とか、簡単なアイヌ語は言ってみたくなりますからね。

編集部員が、魚と包丁で真似してみたところ、まな板を叩く音と「チタタ(プ)」という言葉のリズムが合わさり、なんともいえぬ多幸感に包まれたとのこと。

編集部員が、魚と包丁で真似してみたところ、まな板を叩く音と「チタタ(プ)」という言葉のリズムが合わさり、なんともいえぬ多幸感に包まれたとのこと。


——「オソマ」、流行ってますね……。

野田 いつか流行語大賞に選ばれるといいですね。「そんなもんクソ食らえ」と言ってやりたいです。

——アイヌ料理に対する知識がないので、あえて質問させていただきたいのですが、アシパさんがことあるごとに、杉元や白石に動物の脳みそを食べるように勧めますけど、あれはアイヌ文化では一般的なことなんでしょうか?

野田 どういうことですか?

——つまりその、日本人が外国人観光客に納豆を勧めるような、ちょっと相手の反応を伺うような意図があってのことなのかな? とも思ったんですね。

野田 いや、明治後期生まれのアイヌ女性の手記では、獲れた動物はなんでも脳みそに塩をかけて生で食べていたようですよ。アイヌに限らず猟師のあいだでは、鹿などの脳みそは食べられています。その場合は火を通してますけど。

脳みそ、目玉、内臓……たびたびふるまわれる生肉たちは、ちょっと味わってみたいような、やっぱり遠慮したいような……。そんな複雑な感情から生まれるのが、この杉元たちの表情なのだろうか?

脳みそ、目玉、内臓……たびたびふるまわれる生肉たちは、ちょっと味わってみたいような、やっぱり遠慮したいような……。そんな複雑な感情から生まれるのが、この杉元たちの表情なのだろうか?

——あ、では一般的な食習慣なんですね。

野田 僕もアナグマの脳みそを食べさせていただきましたが、おいしかったです。ヒンナでした。だからアシパさんも、純粋においしいと思っているからこそ、杉元や白石に勧めているのだと思います。

——先生、実際に食べてらっしゃるんですね。

野田 北海道へ取材に行ったときには、フチャ(松の葉の新芽)をむしって、担当さんとカメラマンさんと僕の3人で、口に入れ、3人同時に吐きましたよ。

口にしたものは思わず吐き出さずにはいられない苦さのフ(プ)チャ。そういわれると逆に興味がわいてくるのはなぜだろう。

口にしたものは思わず吐き出さずにはいられない苦さのフ(プ)チャ。そういわれると逆に興味がわいてくるのはなぜだろう。

——おお、3巻第22話と一緒のリアクションですね! ちなみに、これまで作中で描いた料理や動物で、とくに先生が気に入っているのはどれでしょう?

野田 カワウソの頭でしょうか。調理された物の資料がないので、カワウソの頭蓋骨を見ながら想像で描いたんです。しかし、ジビエ料理のシェフに「よく描けている」とほめていただきました。お気に入りの動物は、やはりヒグマでしょうか。作中では便利な召喚獣になってしまってますけどね。大きなヒグマの敷物を持っているんですが……。

——えっ!

野田 たまに頭から被って、クララのおばあさまの登場シーンの真似をしています。ひとりで。

——ひとりで!

次回、作品の魅力を支える強烈なキャラクターたちがいかにして生まれたのか、また作品世界にリアリティを与える細部へのこだわりなど、さらに作品を深く掘りさげるお話を伺った。

つづきはコチラ!
『ゴールデンカムイ』野田サトルインタビュー 「もっと変態を描かせてくれ!」複雑なキャラクターが作品をおもしろくする!!

取材・構成:加山竜司

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