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『魔法自家発電』谷和野インタビュー ときめく不思議な世界は「本棚」のなかから生まれてくる!?

2016/02/28


人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。

今回お話をうかがったのは、谷和野先生!

『このマンガがすごい!2016』でオンナ編12位にランクインした短編集『魔法自家発電』。この作品の著者、谷和野先生は自身初コミックス『いちばんいいスカート』から、そのやわらかく繊細なタッチと、胸をあたたかくさせる世界観で注目を集めてきた。

前回、その谷和野先生から短編集『魔法自家発電』の制作秘話や、先生がマンガづくりの際のこだわりについてもお話をうかがった。
『魔法自家発電』谷和野インタビュー ねぇ、私にも魔法をかけて? イノセントな瞳で見つめて描く、ハートフルな人々と世界

今回は人の心を惹きつけてやまない“谷和野ワールド”の魅力をさらに探るべく、谷先生が今まで影響を受けてきたものをうかがった。谷先生の独特な感受性のルーツとはいったい?

谷和野

第66回 小学館 新人コミック大賞、佳作を受賞しデビュー。自身初の著書となる『いちばんいいスカート』(2014年)は『このマンガがすごい!2015』オンナ編で、26位にランクインした。
月刊flowersで昨年8月から連載を開始した「はてなデパート」が、4月8日(金)にコミックス発売決定!

『魔法自家発電』試し読みはコチラ!
http://sol-comics.shogakukan.co.jp/solc_dtl?isbn=9784091374370


じつは恋愛モノは苦手? マンガ好きな谷先生の意外な一面とは

——先生の作品には子どもが出てくることが多く、そこのことについても前回のインタビューでお話していただきましたが、必然的に親子関係を描かれていることも多いですよね。

 恋愛より描きやすくて……。恋愛モノを描くのは苦手意識があって。

——現在、「月刊フラワーズ」で連載中の「はてなデパート」(※インタビュー当時は連載中。2016年2月現在は連載終了)は恋愛のお話もあったのでは?

 他の先生の作品のなかの若者の恋愛は、まったく気にせず読めるし楽しめるのですが、自分で描く分には、若いキャラクターだと、自分を養えていないのに、他人の気持ちを受けとって様になるのか? と思ってしまって。

担当 と言いつつ、「はてなデパート」では読んでいるこちらがモジモジしてしまうような若者の恋愛も描いているので、「なんだ、描けるじゃないですか」と(笑)。この作品を通して、いろんな引きだしが開いてきましたね。

最新作「はてなデパート」は、その名のとおり不思議なデパートを舞台にした物語。

最新作「はてなデパート」は、その名のとおり不思議なデパートを舞台にした物語。

——「引きだしが増えてきた」ということで、今後、今まで描かなかったモチーフも挑戦されますか? もしかしたらそのうち“スポ根モノ”も?

 スポ根……無理ですよ! 私、スポーツ全然できませんから(笑)。でも読むのは好きです。日本橋ヨヲコ先生の『少女ファイト』を今読んでいるんですが、登場人物たちのそれぞれの成長を追うのが楽しくてたまりません。

——けっこういろんなジャンルのマンガを読んでいらっしゃるんですか?

 そうですね。少女マンガ以外だと最近は、宮崎夏次系先生を知った時がうれしいショックでした。あと幸村誠先生の『ヴィンランド・サガ』とか、河合克敏先生の『とめはねっ! 鈴里高校書道部』とか熱い目で見ていました。

——けっこう幅広く読まれているんですね。少女マンガをたくさんお読みになっているかと思っていたので、意外です!

 私の兄もマンガを買う人だったので、家に男性向けのマンガもあったんです。あとは気になった単行本をジャケ買いすることあります。

——子どものころからマンガ好きでいらっしゃったんですか?

 母が24年組をリアルタイムで読んでいた世代で、自宅に母のマンガがたくさんあったんです。近所に同い年の友だちがいなかったので、家にこもってそれを読んでいました。

——特に印象に残っているマンガは?

 ちょっとしぼりきれませんが、ものすごくはまったのは『王家の紋章』! 子どもの時に読みました。あの頃は時間が長く感じていていて、マンガをずいぶんゆっくり読めました。

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谷先生が子どものころから親しんできている、名作『王家の紋章』。

谷先生が子どものころから親しんできている、名作『王家の紋章』。

——マンガ雑誌はいかがでしょう?

 「りぼん」(集英社)を読んでいました。種村有菜先生の『神風怪盗ジャンヌ』が好きでした。あとは母が渡辺多恵子先生の『風光る』目あてに「別コミ(※別冊少女コミック。現在はベツコミ)」を買っていたので、それに便乗して私も読んでいました。


影響をうけた作品はどれも「お母さんの本棚」から!?

——谷先生は、『魔法自家発電』の帯にコメントをいただいた萩尾望都先生の作品について、前回のインタビューで話していらっしゃいましたね。先ほども、いわゆる「24年組」と呼ばれる漫画家さんたちのマンガを、お母様がお持ちになっていて、それを子どものころから読んでいたとのことでしたが、あらためて「24年組」は谷先生にどのような影響があったのでしょうか?

 中学生くらいのころは、山岸凉子先生の短編をよく読んでいました。『アラベスク』も、主人公のノンナ・ペトロワちゃんの髪型やファッションがとても好きでした。

谷先生が没頭したという山岸涼子先生の作品。『アラベスク』は山岸先生の代表作であり、バレエマンガの金字塔だ。

谷先生が没頭したという山岸涼子先生の作品。『アラベスク』は山岸先生の代表作であり、バレエマンガの金字塔だ。

——代表作『綿の国星』で有名な大島弓子先生の作品も、お読みになりました?

 母の本棚にたくさんあったので、部分的には読んでたんですけど、最初は「難しそう」と思って絵だけを見てました。高校生くらいになってやっと、楽しめるようになったんですが、最初にそう感じた作品は「ヒー・ヒズ・ヒム」。大島先生の作品は1つの作品からこちらへ来るものの量がとても多くて、それを受けとめるのにエネルギーがいるし、あとを引く終わり方をするので、あまり次々と読めませんでした。なので最初は「ヒー・ヒズ・ヒム」ばかりをくり返し読んでいましたね。

——なるほど。先生のタッチや雰囲気から感じていたのですが、やはりの少女マンガの影響もすくなからずあったと。児童文学の影響も感じます。

 好きですよ。安房直子さん、バーバラ・クーニーさん……長新太さんも好きです。

「ソファベッド・ツアー」から。夜中になると空を飛ぶソファは、まさに児童文学にも通じるファンタジックなモチーフだ。

「ソファベッド・ツアー」から。夜中になると空を飛ぶソファは、まさに児童文学にも通じるファンタジックなモチーフだ。

——ほかに先生の好きなものは何かありますか?

 音楽は好きですね。ずっとはまっているのはデンマークのバンドの「Mew」。この方たちは何度も単独公演で来日されているのですが、去年やっと観に行けました。

——仕事中は音楽を?

 あせっている時でなければ音楽をかけるか、テレビを見るかしています。音楽は東京事変とかサイモンとガーファンクルとか、あとはRöyksoppとか……。

——いろんなものが掛けあわさって、谷和野ワールドは形成されているのですね。

 もじつは映画はあんまり観てないんです。マンガを描けるようになるには観たほうがいい……と言われるので、観なきゃと思うのですが……。けっきょく本を読むことが多いです。でも無計画に買ってしまうので、「積ん読」しちゃっています。

単行本情報

  • 『魔法自家発電』 Amazonで購入
  • 『いちばんいいスカート』 Amazonで購入

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