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堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』インタビュー 新世代の王道少年マンガはアメコミヒーロー×学園もの! 人気炸裂(SMASH!!)の連載へと短編を進化させた方法とは!?

2016/06/06


堀越流「個性」創作術! そしてヒーロー&ヴィランのあり方とは……

――そのオールマイトは、スーパーマン[注7]的なイメージのヒーローとなっていますが、デザインで目を引くのはツノのような前髪です。主人公・デク(緑谷出久)のヒーロースーツのモチーフにもなっていますが、どこからこのような奇抜なデザインの発想が?

堀越 オールマイトと名づける前段階、ヴィクトリーというキャラだった頃の名残りです。あの前髪は“Victory(ヴィクトリー)”の“V”を模していました。そり立っている髪が雄々しく頼もしいと感じたので、名前を変えた後も、そのまま使っています。

――デクのデザインは、ストレートに「僕のヒーロー」の主人公・緑谷弱の年齢を引き下げた感じですが、そもそも「緑谷」という名字の由来は?

堀越 必ずしもそうではありませんが、「緑」は“主役になれない色”という感じがしたので使いました。主役にはなりえない地味な存在をつくりたかったので。オールマイトのデザインのなかには入っていない色でもあるので、『僕のヒーローアカデミア』では物語的にもマッチすると思い、短編からそのまま使っています。

デクの名前に使われている「緑」という字には「オールマイトのカラーリングには使用していない色」という意外な理由も。

デクの名前に使われている「緑」という字には「オールマイトのカラーリングには使用していない色」という意外な理由も。

――どのキャラクターも印象的で、いい名前だと思うのですが、堀越先生ご本人は、特に「麗日お茶子」というネーミングを会心のものとおっしゃられていましたよね。

堀越 語感のよさと、能力の掛けあわせ(言葉遊び)がマッチしたので。

――初期案の爆豪勝己……これもスゴい名前ですが(笑)、彼は今のように、いわゆる「攻撃的な性格」で考えてはいなかったとのことですが、その場合もデクと爆豪が戦い、高めあっていくというストーリーラインは変わらない予定だったのでしょうか。

堀越 最初は高めあう、というより、主人公が一方的に爆豪を追いかけていくような形を考えていました。

――現在の、“敵といえば敵だけど悪役ではない”というポジションは、ユニークですが、同時にデリケートに扱わなければならなそうだと思ってしまうのですが。

堀越 今のほうが確実によいのですが、やっぱりそのぶん、とり扱いが難しいです。

デクの幼なじみながら、個性「ワン・フォー・オール」を手に入れた彼を異常に敵視する、「かっちゃん」こと爆豪。

デクの幼なじみながら、個性「ワン・フォー・オール」を手に入れた彼を異常に敵視する、「かっちゃん」こと爆豪。

――クラスメイト、教師、ヴィラン連合と、とてつもないキャラクターの数で、そのほとんどが特徴的な能力(「個性」)を持っています。たとえば、クラスメイトの能力などは、連載準備期間にほとんど決めていた感じなのでしょうか。

堀越 生徒や先生の能力は、ほぼ連載前に決めていました。敵もだいたいは決まっていましたね。

――能力を振り分ける基準は? たとえば、生徒の場合は強くしすぎない、強くても扱いづらくする……といった決まりはあったのでしょうか。

堀越 一部は強く、そのほかのキャラクターは強さに見あうデメリットやハンデをつけました。強い人は思いっきり強くあってほしいので、デメリットはあえてつけていません。

――怪力、爆破、重力操作、高速移動という主人公たちメインキャラの能力チョイスは、どういった発想から? 単行本のおまけページを見ると、必ずしも最初からこの組みあわせで考えられていなかったようですが。

堀越 メインはなるべく「わかりやすい能力」で固めました。セリフで説明しないとわからないような能力じゃなく、絵を見てパッとわかるものが望ましいと考えていましたので。

――では、主人公たちと敵対するヴィラン連合の描写で気をつけていること、力を入れている部分はどこでしょうか。心なしか、ヴィランのほうが描きこみも多いような……?

堀越 敵のほうが単純に趣味が反映されやすいので、描きこみが多くなってしまいます。どこか恐ろしい感じを出したくて、そうなると描きこみに頼らざるをえなくなっていきますから。あと、敵の心情説明などは、なるべく抑えるようにしています。

通称「ヒーロー殺し」のステイン。ダークヒーロー的ともいえる、本作の魅力的なヴィランのひとりだ。

通称「ヒーロー殺し」のステイン。ダークヒーロー的ともいえる、本作の魅力的なヴィランのひとりだ。

――さまざまな立ち位置のヒーロー・ヴィランで入り乱れる『僕のヒーローアカデミア』ですが、執筆する上で「ヒーロー・ヴィランはこうであるべき!」という意識は持っていますか?

堀越 ヒーローは活躍をした時、読者が「よくやった!」と思えるように心がけています。不安を取りのぞく、安心させるような。なので、ヴィランはその不安を与える存在、恐ろしい存在であってほしいですね。

――読者のみなさんの反応ということで言いますと、「最近の少年マンガでは、修行シーンの読者ウケが悪い」という話を聞いたことがあります。ただ、本作におけるデクの場合は、どうしても特訓が欠かせないキャラクターになりますよね。

堀越 本当はもっとじっくりと、デクに身体づくりや筋トレをさせたいんです。ただ、そのような単調なシーンをおもしろく描ける実力は、まだ自分にはないと思っています。模索中です。

――ド派手なバトルや地道な特訓といった、ヒーローを扱った作品ならではのシーンも本作の見どころですが、やはりヒーロー×学園ものということで、個々の生徒たちの口ぐせや表情も含めたキャラ造形が、とても魅力的です。とくに「梅雨ちゃん」こと蛙吹梅雨は、読者人気が高いと聞きます。少年マンガに登場する女性キャラとしては、ちょっと特殊な造形だと思うのですが……。

堀越 梅雨の人気は予想だにしていませんでした。自分はなんとなく気に入っていたのですが、読者の方にも好評いただけた時はとてもうれしかったです。

予想外(!?)の支持を得た梅雨ちゃん。その個性の名は、ズバリ「蛙」。ストレートすぎるネーミング!!

予想外(!?)の支持を得た梅雨ちゃん。その個性の名は、ズバリ「蛙」。ストレートすぎるネーミング!!

――じつは以前、アニメ版の声優さんにインタビューをする機会があったのですが、その際も異常なまでの梅雨ちゃん人気を感じました(笑)。ほか、読者のみなさんからのキャラクターに対する反応で、印象的なものは?

堀越 爆豪も「(自分は)好きだけど、嫌われるだろうな」と思っていたので、人気が出てうれしかったです。逆に峰田(実)なんかは、描いていておもしろいのですが、人気投票はイマイチで「あらら……」となりましたね(笑)。

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最新単行本9巻も絶賛発売中の『僕のヒーローアカデミア』、その誕生の秘密にせまった今回のインタビュー。
次回は、堀越耕平先生が影響を受けたマンガ・映画、さらに『僕のヒーローアカデミア』ファンにオススメするアメリカン・コミックスなど、よりパーソナルかつマニアックな部分にせまります!
そして、気になる今後の展開も……!? 乞うご期待!


  • [注7]スーパーマン DCコミック刊行の『スーパーマン』や『ジャスティス・リーグ』などに登場するスーパーヒーロー。崩壊したクリプトン星から地球にきた宇宙人で、怪力・飛行能力・透視能力・目からの熱戦といった特殊能力を持つ。リチャード・ドナー監督による1978年公開の実写映画や、近年公開されたザック・スナイダー監督による一連の『マン・オブ・スティール』『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』シリーズ作品を筆頭に、メディア化も多数。

取材・構成:ガイガン山崎・編集部

単行本情報

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