人間くささを感じる物語世界が好きです
――今、注目している漫画家さんは?
いがわ 一番は渡辺ペコさんです。幻冬舎のウェブマガジン(「幻冬舎plus」)で連載中の『わたしのはなし』、それから、こちらもまだ単行本化されていない作品ですが、『おふろどうぞ』(太田出版「マンガ・エロティクス・エフ」連載)などが特に好きです。
――キャラの奥深さなどは、いがわ先生と共通する雰囲気があると感じます。
いがわ キャラというより、全体的な雰囲気を通しての優しさが好きですね。あと、人間くささが描かれているところも好きです。
――マンガを読む以外には、自由な時間があったら何をしてますか?
いがわ アプリのゲームしてます。……なんか、ダメな人っぽいですね(笑)。それか、「Yahoo!知恵袋」のおもしろ回答[注5]を見てます。くだらないのを見つけては、友だちと送りあったりして。そう、あとは人としゃべったり、映画を観たり。
――どんな映画が好きなんですか?
いがわ なんでも観ますけど……特に好きなのはホロコーストものです。ホロコーストを題材にした作品。
――え!? ずいぶんとピンポイントですね。なぜホロコーストなんですか?
いがわ う~ん、どうしてなんでしょうねぇ。小さい頃から戦争を題材にした本を読むのが好きだったんですよ。強いていえば、民族間のぶつかりというものを、両者の立場から見ることに興味があるのかもしれません。
――ホロコーストを題材にしたもので、これから時間ができたら観てみたい作品などはありますか?
いがわ ずっと観たくて、まだ観れていないのが『ショア』[注6]という作品。これは、当時迫害されていたユダヤ人の方々とヒトラー親衛隊の生き残りにインタビューをしたドキュメンタリー系のもので、9時間半もあるんです。いつかDVDを買おうと思っているうちに、どんどん高騰してしまって。
――9時間半! 観ようと思うだけでも根性がいりますね……。
いがわ でも、そんなに重たいものばかり観ているわけじゃないですよ。恋愛を絡めたものも観ますし。『モンスターズ・インク』[注7]をはじめ、ピクサー作品も大好きで、よく観ています。
――最近は、小説を読む時間もあまりとれない?
いがわ 小説はお風呂で読んでます。現代日本の女性作家が多いかな。
メモもプロットもなしのマンガ作法
――マンガを描く時は、プロットから始めるんですか?
いがわ いえ、プロットは書かないです。盛り上がる、メインになる場面を考えて……要素が絞れたら、いきなりネームに入ります。
――小説を書いていた経験があるから、がっちり文章でプロットを作るのかなと思ったのですが。
いがわ 私は文章を絵にするのがあまり合わないみたいなんです。文章を作りこんでマンガに落としこもうとすると、グダグダになっちゃいます。
――小説を書いていた経験がプラスになったと思うことはありますか?
いがわ 直結するところはないかな。でも、当時書いていた小説と、今の作風に共通する点はあります。主要なキャラが複数出てきて、何人かの視点で進んでいくようなパターンが好き。たぶんこれが好きなドラマの構図で、いちばん描きやすいんだと思います。
――作画はアナログですか?
いがわ 全部アナログです。Gペンと丸ペンで描いてますが……もっとセンスがある線になりたいんですよね。
――アナログにはこだわりを持っているんですか?
いがわ 別にこだわりはないんですけど、パソコンがすごく苦手だからアナログで描いてます。作画ソフトなども買ってはみるんですけど、結局は放置してます。
――ということは、将来的にはデジタルを導入しないでもない?
いがわ 苦手意識を上回る興味が出れば(笑)。
――なるほど(笑)。では最後に、『あれがいいこれがいい』『虹の娘』に続き、昨年10月には初の本格連載『さよならまたこんど』の単行本も刊行、「フィールヤング」では『ちぇみと三兄弟』を連載中と、まさに波に乗っているいがわ先生、「このマンガがすごい!」の読者の皆さんに向けて、メッセージをお願いします。
いがわ 2014年もがんばりますので、見ててください!
――描きたいものは尽きないですか?
いがわ たぶんそうだと思います。ストックしたりはしないんですが、何を描こうか考えると、わーっと頭のなかに、たくさん出てくるんですよね。絵に描き始めたらすごく遅いのが残念です(笑)。
- [注5]「Yahoo!知恵袋」のおもしろ回答 Yahoo! JAPANが運営するwebサービスで、ユーザーの疑問に別のユーザーが回答する、Q&A形式のコミュニティサイト。珍質問や名回答も多く、近年では、サイト内のやり取りが書籍化や映像化することも。
- [注6]『ショア』 1985年に公開された、フランスの映像作家クロード・ランズマン監督によるドキュメンタリータッチの作品。実際にホロコースト(ナチスによるユダヤ人絶滅政策)に関わった人々への長時間に及ぶインタビューなどが収められている。
- [注7]『モンスターズ・インク』 2001年に公開されたフルCGアニメーション映画で、製作はディズニーとピクサー。モンスターの世界に住む、サリーとマイクの「怖がらせ屋コンビ」と人間の少女の出会いと活躍を描く。日本語版の吹き替えを担当したのは、ホンジャマカの石塚英彦、爆笑問題の田中裕二など。2012年には、本作の前日譚として『モンスターズ・ユニバーシティ』も製作された。
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取材・構成:粟生こずえ・編集部 撮影:辺見真也