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【インタビュー】妄想がかたちづくる物語は、自分自身でも予測不能! 『宝石の国』市川春子【後編】

2014/08/29


色っぽさのあるマンガを描いていきたい

――大学で美術を学んでいたそうですが、専攻は? マンガを描くうえで役立ったことはありますか?

市川 視覚映像デザイン研究室というゼミに在籍していました。全員まるでバラバラのことをやっている変わった研究室で。技術的に直結するようなことはこれといってないんですが、尊敬する教授のもと、個性的な友だちが多くできたのはよかったです。

――独創的なストーリーはどんなふうに生まれるのでしょう?

市川 これは話になるかなあ、という種のようなものに肉付けをしていくのですが、途中でおもしろいところがふくらんでくれば、そっちに引っぱられていく感じです。

――アイデアを得るために心がけていることなどは?

市川 特にないですが、歩いたり、小さな旅行をしたり、TV のニュースを見たりしている時に思いつくことが多いかもしれません。

――文学、映画などでお気に入りがあれば教えてください。

市川 カフカの作品は読書それ自体が「体験」で驚きます。『審判(訴訟)』が特に好きです。美学的なことは澁澤龍彦作品から教わりました。映画は『スターウォーズ』『ロボコップ』、エドガー・ライト監督の作品が好きです。最近見たなかでは『エンダーのゲーム』がおもしろかったです。

――影響を受けたと思う漫画家さんは?

市川 高野文子さん[注10]、杉浦日向子さん[注11]の作品がとても好きなので、影響されてると思います。最近、特に注目しているのは横山裕一さん[注12]の作品です。とにかくクールです。

市川先生も注目する横山裕一さんの代表作のひとつ『ベビーブーム』(イースト・プレス)。ちょっとシュールな世界観はかなりユニーク。

市川先生も注目する横山裕一さんの代表作のひとつ『ベビーブーム』(イースト・プレス)。ちょっとシュールな世界観はかなりユニーク。


――無機的なようでどこか色っぽい雰囲気は、市川先生の世界とも通ずるところがあると思います。

市川 ありがとうございます。マンガを描くうえで「色っぽさ」はすごく大事にしています。

無機質ながらどこか色っぽい宝石たち。全員がそろうとその美しさに圧倒される。

無機質ながらどこか色っぽい宝石たち。全員がそろうとその美しさに圧倒される。


――今、時間があったらやりたいことはなんですか?

市川 鉱物標本のラベル作成と整理でしょうか。

――あ、けっこう本気で集めてらっしゃるんですね。そういえば、鉱物ではなく「宝石」は身につけたりはしていないのですか?

市川 残念ながらアクセサリーはじんましんが出てしまう体質なんです。身につけるのは腕時計くらいですね。

――今後描きたい作品の構想などは温めていますか?

市川 うーん、今は手一杯で具体的には考えていないんですけど、最近は血管に興味があります。

――血管!? それはまた……マンガのテーマとしてはすごく意外ですが、ぜひ読んでみたいです! では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

市川 『宝石の国』はまだ連載が始まったばかりの頃に『このマンガがすごい!2014』でオトコ編10位に取り上げていただきありがたいなあと思いました。これからも、よろしくお願いいたします。


  • 注10 女性漫画家。代表作に『絶対安全剃刀』『るきさん』『黄色い本』など。デビューから30年以上の大ベテランながら単行本わずか6冊と極めて寡作。しかし、シンプルな線と独特な演出で生み出される世界観は非常に独創的で、多くの漫画家に影響を与えた。
  • 注11 女性漫画家、江戸風俗研究家、エッセイスト。代表作に『百日紅』『百物語』など。江戸文化に造詣が深く、シンプルながら独特な画風で江戸の人々の生活を生き生きと描いた。また、『コメディお江戸でござる』(NHK総合テレビ)では江戸風俗の解説も担当した。
  • 注12 漫画家、イラストレーター。マンガの固定概念を超越した独特の作風は国内だけでなく海外でも注目を集める。

取材・構成:粟生こずえ

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