話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『このマンガがすごい! comics 大市民傑作集 やはりビールは美味し! 編』
『このマンガがすごい! comics 大市民傑作集 やはりビールは美味し! 編』
柳沢きみお 宝島社 ¥590+税
(2017年3月13日発売)
月収400万円超の人気小説家でありながら4人の妻と11人の子どもへの養育費がかさんで、安アパートで普通のサラリーマン以下の生活をいとなむ渋オジ・山形鐘一郎が、毎日の生活のなかで見いだしたものごとに様々な考察を加え、おもに自炊という食生活のなかでゼッタイにゆずれないこだわりの数々を語りつくす、巨匠・柳沢きみおのライフワーク『大市民』。
「アクションピザッツ」(双葉社)で1990年に連載を開始。いわゆる第1シリーズが約6年間の長期連載をへてぶんか社「イケイケ課長」で第2シリーズ(『大市民II』)、講談社「ヤングマガジンアッパーズ」で第3シリーズ(『THE大市民』)、そして同誌の休刊後は「別冊漫画ゴラク」(日本文芸社)に舞台を移して第4シリーズ(『大市民日記』)……と、完結巻にあたる『大市民 最終章』(2015年、双葉社)まで、じつに25年にわたって『大市民』は脈々と続いてきたのだ。
物語は、山形が暮らすアパートの住人との生活を中心に展開する。
バブルがはじけて無一文となり、山形の部屋に居候を決めこむ元不動産会社社長・佐竹。浪人生を経て、プロボクサーになった青木。夜の六本木で出会った山形を慕ってアパートに住むようになった愛人志望の女子高生・美子。実家の温泉宿の廃業をきっかけに上京し、山形の住むパートに入居した真子……。
かたや人気作家、かたや零落した元成功者、という好対照によって、意見や共感性を二分しやすいところがあるからなのだろうか? 同居しているだけあってトラブルメーカーの佐竹との名(迷?)コンビによるエピソードは特に多い。