「このマンガがすごい!comics」レーベルで1月に刊行された『大市民傑作集 冬の美味しは、これだ! 編』ではラーメンや鍋といった冬のグルメにスポットをあてていたが、今回リリースされた本書はさらにテーマをしぼってずばり「ビール」を山形が斬る! という趣向になっている。
ビールといえば「とりあえず生!!」みたいな感じでポピュラーすぎると思われるだろうが、そこはそれ、こだわりの山形にとってはされどビール、たかがビール。
1本めの「夏とビールとビヤガーデン」では、暑い夏の大定番としてのビールを、なんと健康的側面から山形が分析。ビールの原料である麦とホップの成分が老化や肌にいいという効能や、彼が理想的運動と推奨する「水泳」と組みあわせることによって、さらに老化防止の効果があるとする。
諸説あるとは思うが、このエピソードに続いて「夏のハイレグ」という話が配置されて、山形の若々しい肉体(と、佐竹の歳相応なダルダルボディ)が描かれると、不思議な現実味を帯びてくる。
寒さ深まる季節にビールを飲むとなぜか食べたくなるラーメンについてつづった「ラーメン悲話」や、旅先である秋の海で様々なことにもの思いをめぐらせたあと鍋とビールに舌鼓をうつ「ナベは日本の宝」など、四季おりおりのビールの楽しみ方を伝えてくれる。
ビールはなにも夏だけのものとはかぎらないが、ビールに合うのはやはり夏の食べ物。
「田舎風ソーメン」のように自家製めんつゆで夏バテを乗りきる方法や、最適な酒のつまみは具なしの冷やし中華にかぎるという「シンプル冷やし中華」など、リーズナブルな夏のすごし方は多数登場する。
そのどれもがすぐにトライできそうなものばかりで、次にその料理をする際には、ついつい試してしまいそうだ。
今年もまたビールのうまい春、そして夏がやってくる。
『大市民』を読んで、今年こそ山形流ライフスタイルを味わってみたはいかが?
<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。