また『食キング』は、そんな「バトル」要素に「大食い」というテーマをかけあわせた唯一無比の食マンガ。
なかでも本作のラーメンエピソードは、真剣な眼差しで丼を抱え、豪快に麺をすすりこむアスリートさながらの男たちの喰いっぷりに、見ていて胸が(腹も!)すく思い。頭のなかで福澤朗の実況中継が流れだすほどだ。
さらに『極道めし』では、食マンガにもかかわらず、登場人物がバトルにおいて実際に何かを食べることはいっさいない――という実験的すぎる境地にに到達。もはや本物のラーメン以上に食欲を刺激する!? 本作中の「エアめし」は一見の価値ありだ。
現在も連載中の『野武士のグルメ』では、『孤独のグルメ』の久住昌之とのタッグ作ゆえ破天荒さはないものの、店を探すところから食後の水のうまさまで、いちいちかみしめるようにラーメンを楽しむ壮年男性の脳内ボヤキは、しみじみした実感にあふれている。
登場するラーメンもオーソドックスな醤油ラーメンから豚骨、昨今流行の煮干し・アゴだし系、ご当地ラーメンに屋台のラーメン、中華料理屋のタンメンまで、じつに様々で「ラーメン」の深さと楽しさがてんこ盛り。
「ズズズズッ」「モムモム」「チュルン」といったライブ感あふれる擬音もすばらしく、読めばラーメンを食べたくていてもたってもいられなくなること間違いナシ!だ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
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