話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『バイオレンスアクション』
『バイオレンスアクション』著者の浅井蓮次先生・沢田新先生から、コメントをいただきました!
『バイオレンスアクション』 第1巻
浅井蓮次(画) 沢田新(作) 小学館 ¥630+税
(2017年3月10日発売)
『バイオレンスアクション』というド直球のタイトルと、それにまったく似つかわしくないふんわりタッチの少女。
そのギャップに満ちた表紙だけで「なんだこれ?」と思わせるに十分なパンチがあるが、ひとたび読み始めると彼女の魅力に即ノックアウトである。
ヤバい。かわいいは正義ではない。危険である。
明らかに「そのスジの人」とわかる男が死を目前にしながら、こんなゆるふわ少女にチェキで苦悶の表情を撮られるのはどのような気持ちなのか? そもそもこの子は何者なんだ? ……と、わずか数ページにして想像力を刺激されまくりである。
「ケイ」と呼ばれる彼女は「ぷるるん天然娘特急便」なるデリヘルで、指名ナンバーワンを誇る嬢。しかしそのデリヘルは表向きの看板であり、真の業務は「殺しのデリバリー」である。指名ナンバーワンというのも、あくまでも「人殺しの仕事」でのこと。実際のところデリヘル嬢としての業務も行っているのかは謎なのだが、そこに想像の余地があるのもまた魅力的だ。
そしてこんな真っ黒な仕事に手を染めてきながら、彼女の信条は「希望を持つこと」であり、その希望が今のところは「日商簿記検定2級合格」という堅実なものであるのもポイント。
しかも、とある事情で殺人指令に待機が出るやいなや、殺しのターゲットを前にして「休憩時間」といい放って簿記試験のための勉強を始めてしまうあたり、マジメなんだか壊れているのかさっぱりわからないのだが、とりあえず彼女が気になる存在であることだけは間違いない。
ある一件から、ケイの本名がどうやら「菊野渓(きくの・けい)」らしいということは判明するが、いったい何がどうなればこんな凄絶な人生を送ることになるのか見当もつかないし、彼女が心の奥底にどれほどの闇を抱えているのかも計り知れない。
簿記試験に対してはやたらこだわりがあるものの、おそらくその目標は「小さな希望を持つ」ためであり、現状を受け入れているのか、あるいは絶望のエッジで危うい歩みを続けているのかも、想像の範疇でしかない。