「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、Vシネマ『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』
オリジナル作品のテレビ放映は1982年にさかのぼる特撮ヒーロー番組「宇宙刑事」シリーズ。
第1作の『宇宙刑事ギャバン』から続く『シャリバン』『シャイダー』は「宇宙刑事三部作」と呼ばれ、当時としては斬新な設定や過激かつスピーディーなアクションで日本のヒーロー史に大きな足跡を残した作品である。その伝説のヒーローが、2012年に公開された映画『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』をきっかけに完全復活。
宇宙刑事誕生30周年のアニバーサリー作品となる映画『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』、そして2014年にリリースされたVシネマ作品『宇宙刑事 NEXT GENERATION』のシャリバン編、シャイダー編というかたちで新作の公開が続いたが、今度は宇宙刑事シリーズと同じく、宇宙規模の警察組織が背景となるスーパー戦隊シリーズ『特捜戦隊デカレンジャー』とクロスオーバー!
よりスケールの大きな世界観を持つ「スペース・スクワッド」シリーズとして展開する運びとなった。
その第1弾となるのが本作『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』である。
脚本と監督は『宇宙刑事 NEXT GENERATION』に引き続き、荒川稔久と坂本浩一のタッグが実現。『特捜戦隊デカレンジャー』でメインライターをつとめただけでなく、宇宙刑事3部作で数多くのエピソードを執筆した脚本家・上原正三を敬愛することでも知られる荒川稔久と、熱い演出とソリッドなアクションに定評のある坂本浩一のコンビでこの題材。これがおもしろくならないワケがない!
……と、公開前から特撮ファンの期待はすでにマックスだったワケだが、その内容はまさに期待以上。初代ギャバンを演じた大葉健二を含め、『ギャバン THE MOVIE』と『デカレンジャー』の主要キャストが揃い踏みしたことも特筆ものではあるが、決して「ファンサービス」だけにとどまらない練られたストーリー、そして「今の何!?」と何度でも見直したくなる驚愕のアクションを絡めたクライマックスまで、溜飲下がりまくりの85分。
もちろん、テレビシリーズから引っ張られ続けたウメコとセンちゃんの結婚をはじめとする『デカレンジャー』のエッセンスがあますことなく取りこまれているのはいうまでもないことだが、過去作では描かれていなかった初代ギャバン・一条寺 烈から新世代のギャバンである十文字 撃への「宇宙刑事魂の継承」が非常に重要なファクターとなっているのも泣かせるところ。ほかにも見どころはいくつもあるが、制作陣の個々のキャラクターへの理解が明確であるがゆえ、あらゆる会話と展開に納得がいくハッピーな作品に仕上がっていることを伝えておきたい。
さらに本作の敵として、メタルヒーローシリーズ第4作『巨獣特捜ジャスピオン』のダークヒーロー・マッドギャランが登場していることからもあきらかなように、『スペース・スクワッド』の世界のつながりは、宇宙刑事三部作と『デカレンジャー』だけにとどまらない。
本作の終盤において「うわー! これもつながっちゃうのか!!!!」と、ぜひ驚いてほしい。
そんな未来へ向かって広がりと無限の可能性を感じるのも、本作の大きな魅力である。
さらにつけ加えておくならば、コレクターズパックならセットで楽しめる『ガールズ・イン・トラブル スペース・スクワッド EPISODE ZERO』も必見ということだろう。こちらも脚本&監督は、本作と同じく荒川稔久と坂本浩一のコンビだが、「それぞれお得意のガールズ編でしょ?」などと、甘く見てたら大間違い!
そもそもにおいて『ギャバンVSデカレンジャー』の前日譚であり、そちらと直接的につながる要素の多さでも見逃せない作品なのだが、アクションのガチっぷりは「ヤバい」のひと言。
とりわけ、残念ながら『ギャバンVSデカレンジャー』には登場していない女宇宙刑事・タミーの(主にふとももが)ド迫力のバトルと、仮面ライダーマリカ(『仮面ライダー鎧武』に登場)役などでおなじみの佃井皆美演じるマキのキレッキレのアクションに刮目!
もちろんストーリー面もさすがの安定感ではあるが、ひとまず彼女たちのアクションだけで無限に絶賛できるすばらしさといっておこう。
そして、往年のスーパー戦隊ファンなら「今度は佃井皆美さんがファラキャットとかレー・ネフェルで再登場しないかなー」などと、妄想全開になること必至……かもしれない。
そんなわけで、『スペース・スクワッド』シリーズとして今後の展開にも期待大といったところだが、まずは『ギャバン』と『デカレンジャー』の世界をたっぷりと味わっていただきたい。
オリジナルの旧作、そして『宇宙刑事 NEXT GENERATION』や『特捜戦隊デカレンジャー 10 YEARS AFTER』もあわせて観れば、その魅力が増し増しになることは間違いなしですよ!
Vシネマ『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』を観たあとに……
今回、映画『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガ作品を紹介しちゃいますよっ。
『宇宙刑事ギャバン』 八手三郎(作) のなかみのる(画)
『宇宙刑事ギャバン』
八手三郎(作) のなかみのる(画)
大都社 ¥840+税
(2000年4月8日発売)
番組放映当時にテレビマガジンにて連載されていたコミカライズ作品を、大幅に加筆して単行本化。いわゆる児童書タッチのコミカライズだと思いきや、今ではありえないであろうバイオレンス表現もチラホラ見受けられるのも興味深い。
さらに単行本化に際して、多くの漫画家やイラストレーターによるギャバンを収録。
なかでも石川賢やふくしま正美の筆によるギャバンが拝めるのがすごすぎる!
これも、いかにギャバンが各方面に大きなインパクトを与え、愛されたかという証明になるだろう。
『宇宙刑事ギャバン』のほかに、このマンガもおすすめ!
『宇宙刑事ギャバン ~黒き英雄~』 小林雄次(脚本) 藤沢とおる(構成・演出) 太田正樹(漫画)
『宇宙刑事ギャバン ~黒き英雄~』
小林雄次(脚本) 藤沢とおる(構成・演出) 太田正樹(漫画)
秋田書店 ¥638+税
(2013年9月6日発売)
こちらは『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』公開時に描かれた作品だが、ストーリーは完全オリジナル。『宇宙刑事シャイダー』の最終話で揃い踏みとなったギャバン・シャリバン・シャイダーの後日譚としても楽しめる。作画は太田正樹。構成と演出を『GTO』『仮面ティーチャー』などで知られる藤沢とおるが担当している。
『特捜戦隊デカレンジャーTHE MOVIE フルブラスト・アクション』 東映(監) 竹山祐右(画)
『特捜戦隊デカレンジャーTHE MOVIE フルブラスト・アクション』
東映(監) 竹山祐右(画)
角川書店 ¥580+税
(2005年6月1日発売)
同タイトルの劇場版作品をベースとするコミカライズだが、映画では描ききれなかった事件の背景やキャラクターの深掘りをした結果、ほぼオリジナルといえる内容となっている。
キャストを意識したキャラデザインも秀逸だが、本作のみに登場するデカレッドの「ブラストモード」が超カッコいい! 単行本で読むことのできるスーパー戦隊のコミカライズ作品自体がそもそも希少ではあるが、それを抜きにしても熱すぎる必読の1冊。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。