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【共謀罪適用か!?】新宿・歌舞伎町がかめはめ波で爆破⁉ 【B級ニュース】

2017/06/20


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「歌舞伎町でかめはめ波が打てるようになること」について。


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『DRAGON BALL超画集』
鳥山明 集英社 ¥3,619円+税
(2013年5月9日発売)


東京都新宿区の歌舞伎町が、今大きく様変わりしようとしている。
かつて文化の発信地として知られた映画館「ミラノ座」は2014年末に惜しまれつつも58年の歴史に幕を下ろしたが、今年の7月14日には、その跡地にVR(仮想現実)の最新技術を体験できるエンターテインメント施設「VR ZONE SHINJUKU」がオープンする。
エヴァンゲリオン、マリオカート、ドラゴンボール、ガンダムなどをテーマにしたアトラクションが用意されており、歌舞伎町の新名所になるに違いない。

広場を挟んだこの付近には、旧コマ劇場跡地にはゴジラを屋上にいただく「新宿東宝ビル」もあれば、プロレスの会場としてもおなじみとなったイベントホール「新宿FACE」もあり、少し足を伸ばせば外国人観光客に大人気の「ロボットレストラン」もある。
日韓W杯前は性風俗店や10円ゲーム(違法賭博)のネオンが町を彩っていたが、今や町全体が一大エンターテインメント・タウンへと大きく様変わりしつつあるのだ。
まさしく歌舞伎町ルネッサンスである。

しかし、一般的にはまだ歌舞伎町といえば、「東洋一の歓楽街」としてのイメージが強いのではないだろうか?
ゴールデン街、キャバクラ、ホスト、反社会勢力……と、清濁合わせ飲む懐の広さがあるからこそ、この町はあらゆる階層の人々に愛されてきたのである。
そしてマンガの世界でも、歌舞伎町を舞台とする作品はたびたび描かれてきた。それらの作品を紐解けば、この町の歴史がきっと見えてくるはずだ。
といったわけで今回は、マンガで見る「歌舞伎町今昔物語」を特集する。

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『ビッグ作家 究極の短篇集 藤子不二雄A』
藤子不二雄A 小学館 ¥667+税
(2013年4月30日発売)

70年代の歌舞伎町の様子をつぶさにスケッチした作品といえば、藤子不二雄A「シンジュク村大虐殺」(小学館『ビッグ作家 究極の短編集 藤子不二雄A』に収録)だ。
ベトナム戦争に従軍したアメリカ兵が日本で休暇を過ごしていたところ、歌舞伎町のキャッチバーでぼったくり被害に遭い、逆上してシンジュクで大虐殺を繰り広げる超問題作である。
作中の背景には、1970年代の歌舞伎町(作品初出は「ヤングコミック」1972年12月13日号)が克明に描かれており、そのリアリティによって「日常風景のなかで突如として虐殺が起きる」というソンミ村大虐殺の恐怖が再現されているわけだ。
ミラノ座、ミラノ座前広場、ミラノボウル、コマ劇場が往時の姿そのままに拝むことができるし、作中の人物が新宿プラザ劇場で見ていた映画が『ゴッドファーザー』(日本公開は1972年)だったり、70年代の歌舞伎町の光景を知る資料としても価値は高い。
現在、歌舞伎町では「ぼったくりイヤイヤ音頭」(嘉門達夫)や、声優・柴田秀勝(『タイガーマスク』のミスターX、『機動戦士ガンダム』のデキン・ザビなど)のアナウンスが街頭で流され、悪質な客引き行為への注意を喚起している。ぼったくりが悪い意味での名物だったのに、今では「ぼったくり対策」が名物となりつつあるところも、歌舞伎町らしいといえるのかもしれない。

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『シティーハンター COMPLETE EDITION』 第1巻
北条司 徳間書店 ¥933+税
(2003年12月15日発売)

さて、80年代から90年代のバブル期の歌舞伎町を舞台としているのは、ご存じ『CITY HUNTER』(北条司)である。
主人公の冴羽獠はボディーガードや探偵、暗殺を営むスイーパー(始末屋)。裏の世界では随一の凄腕スイーパーだが無類の女好き。
ハードボイルドな世界観に80年代的な「軽い」コメディ要素を持ちこんだ作風、北条司による超絶作画の美女が毎回登場するなどの要素が読者に支持され、アニメはおよそ3年間も続いた。 報酬に「もっこり」を要求する主人公が、少年誌(週刊少年ジャンプ)やテレビのゴールデンタイムを席巻していたのだから、すごい時代があったものである。
作中、シティーハンターに依頼をするには、新宿駅の東口(歌舞伎町方面)にある掲示板に「XYZ」と伝言を残すのが合図。そして冴羽の住むマンションは区役所通りの近辺(住所は架空のもの)であり、歌舞伎町特有の雑居ビルが作中で何度も描かれた。
なお、2001年から連載を開始した続編『エンジェル・ハート』および『エンジェル・ハート 2ndシーズン』でも、21世紀の歌舞伎町の姿を活写してくれた。
今年に入って『エンジェル・ハート 2ndシーズン』が連載を終了したのも大きなトピックだが、7月25日発売の「コミックゼノン」9月号からは、高校時代に冴羽獠に出会ったアラフォー独身女性が、シティーハンターの世界に転生する『今日からCITY HUNTER』がスタートする。
作品を手がけるのは錦ソクラ。竹書房「近代麻雀」連載の『3年B組一八先生』ではあらゆる作家のパロディをやり、特に『シティーハンター』をパロディした回は、絵柄だけでなくコマ割や構成までじつに「シティーハンターっぽい」と、マンガ業界が騒然としたのも記憶に新しい。
その錦ソクラが、『CITY HUNTER』を「参考書」にして、今流行の「転生もの」を北条司のお膝元「コミックゼノン」で公式に連載する……。
これはハッキリいって、事件である。
きっとアスファルト、タイヤを切りつけながら暗闇を走り抜けていくような作品になるに違いない。

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『新宿スワン』 第1巻
和久井 健 講談社 ¥552+税
(2005年9月2日発売)

2000年代の歌舞伎町の裏の世界を題材にしたのが『新宿スワン』
一文なしの主人公・白鳥龍彦が、歌舞伎町のスカウトマン(AV、水商売、風俗)の世界に入り、裏街道で出世していくサクセス・ストーリーだ。
歌舞伎町でのスカウトマンという特殊な職業を皮切りに、夜の歓楽街での仕事をかいま見ることができる。「渋谷AV編」や「闇金編」などで裏稼業を扱いつつも、2000年代に入ってから世間的に広く認知されるようになったホストの世界を描いた「ホストバブル編」などもあり、「東洋一の歓楽街」の裏側を見せてくれる。
2015年に公開された劇場映画『新宿スワン』は、園子音が監督を務め、主役の白鳥役を綾野剛が演じて大好評を博した。今年2017年の1月には続編となる『新宿スワンⅡ』が公開されたばかりで、原作終了(2013年)後もその世界は広がりを見せている。

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『5001年 ヤクザウォーズ』
高円寺 博(作) 石川賢&ダイナミックプロ(画) 双葉社 ¥1,048+税

70年代からさかのぼって歌舞伎町の変遷を見てきたが、では未来はどうなるのか? 最新技術と歌舞伎町が結びついたあかつきには、どのような世界が待っているのか。
それを描いたのが『5001年 ヤクザウォーズ』(原作:高円寺博、作画:石川賢&ダイナミックプロ)である。
5001年、51世紀を迎えた人類は、ほかの星系にまで進出していた。
だが、ヤクザはなくならなかった!!
主人公である北斗の源二は、関東異次元一家の代貸である。
「細胞具(サイボーグ)のオジキ」とか「ブラックホールの政」とか、キレッキレのキラーワードが作中で連発されるが、ストーリー自体は任侠ものの王道。ギャグなのか王道なのかわからないまま、とにかくものすごい勢いで読者を異次元のはるか彼方まで連れていってしまうのは、ダイナミックプロの十八番だ。
作中、主人公・源二が所属する関東異次元一家は、極陽組と抗争を繰り広げている。そして源二は、極陽組の本拠地・新宿カブキ星へと乗りこむのであった!
5001年、歌舞伎町は宇宙の星になっていたッ!!

歌舞伎町の未来がどうなるのかはわからないが、まかり間違ってカブキ星になる可能性もゼロではないかもしれないが、ともかく現在はVRである。
今からオープンが非常に楽しみだが、やがてはアトラクションが増えたり、変わっていったりするのだろう。
歌舞伎町の新名所として定着したあかつきには、VRで歌舞伎町の過去を振り返るようなアトラクションもできるかもしれない。VRで昔のキケンな歌舞伎町を歩き、店舗を出たら安全な歌舞伎町……と。まぁ、それは『龍が如く』(セガ)じゃないか、というツッコミはなしで……。

2017年。
VRはますます身近なものになり、VR元年として記憶されることだろう。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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