日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『乱歩の美食』
『乱歩の美食』 第1巻
楠本哲 日本文芸社 ¥593+税
(2017年1月19日発売)
『乱歩の美食』という題名から、ミステリ作家の江戸川乱歩がグルメ旅するのかと思いきや、残念ながら江戸川乱歩ではなく、「乱歩」という名前の私立探偵が主人公の作品。
『交渉人 堂本零時』などの楠本哲の最新作は、「調査費とは別に一食分の食事代を経費として計上」する、一風変わった私立探偵・宇田川乱歩が登場するグルメマンガである。
「食事は嘘をつかない!!」が乱歩の信念(ポリシー)。
乱歩は、アルバイトの明石智子とともに調査対象者を尾行し、食事をする様子を観察することで、その人となりを見抜くのである。
作中では、品川のシンガポール料理、新宿・歌舞伎町の家庭料理、神保町の四川料理、大和市の焼肉、新橋の山形料理、幡ヶ谷の串かつ、横浜・野毛のおでんとまかない、池袋の寿司……といった料理が、じつにうまそうに紹介される。
登場するお店は、名前が少し変えられていたりするが、例えば「品川 シンガポール料理」で検索すると、乱歩がチリクラブを味わった店を特定することができるのだ(このあたり鳴見なるの『ラーメン大好き小泉さん』といっしょである)。
「美食」といいながらも、乱歩が利用するのは庶民的な店なので、調べてみれば乱歩たちが味わった料理を体験することは可能だ。ぜひ、やってみてください。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。、「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)でミステリコミックの年間レビューを担当。