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『このマンガがすごい!comics ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(七月隆文・作 大谷紀子・画)ロングレビュー! ついに完結! さらに第3巻は”幻のエピソード”が特別描き下ろし収録!

2017/07/14


すれ違っているんじゃない。「輪になってひとつにつながっているんだ」……2人は運命をこう解釈し、残された時間を大切にすごそうと決意する。

すれ違っているんじゃない。「輪になってひとつにつながっているんだ」……2人は運命をこう解釈し、残された時間を大切にすごそうと決意する。


一時はそんなジレンマにとらわれた高寿が、愛美の立場を思いやることによって持ちなおすに至る。自分が思い悩むのと同じ苦しみを、彼女も担っているはず。どうにもならない運命を呪うよりも、何よりも、今この時を、今いっしょにいられる幸せを大切にするべきではないのか。

高寿が到達するのは、普遍的な答えだ。
人はいつ離ればなれになるかわからない。過去にこだわったり、未来を憂えることに時間を割いているのはもったいない!

無邪気にふるまう愛美の笑顔が、平和な日常のかけがえのなさを訴える。愛してやまない人が、自分の世界からいなくなってしまうなんて……。

無邪気にふるまう愛美の笑顔が、平和な日常のかけがえのなさを訴える。愛してやまない人が、自分の世界からいなくなってしまうなんて……。


最後の日“40日目”が刻一刻と近づくまでの、2人の日々の描写はなんとも印象的だ。本作のカメラは、もうじきこの世界から消えてしまう愛美の様々な表情を記憶におさめようとする高寿の気持ちに同期する。やさしく包みこむような笑顔、いたずらっぽい表情、「愛してる」とつぶやく真剣なまなざし、隠しきれないせつない気持ちも。

クライマックスにかけての描写には、結末がわかっていても胸がしめつけられる。とても短い期間限定の恋だけど、20歳の恋人同士として過ごした40日間は決して消えることはない。「愛は永遠」って、そういうことではないだろうか。

いよいよ「その日」の前日。実家を訪れ、両親に愛美を紹介した帰り道、高寿は悲しみをこらえきれなくなってしまう。

いよいよ「その日」の前日。実家を訪れ、両親に愛美を紹介した帰り道、高寿は悲しみをこらえきれなくなってしまう。


最終話のあとに収録された描きおろしストーリーは、高まりまくった感情をほっと和ませてくれる効果も絶大の、コミックスでしか読めない幻のエピソードである。
5歳の愛美が両親に連れられて初めて「隣の世界」にやって来たあの日——そう、人生で初めて高寿に出会った運命の瞬間が描かれている。 幼いながらに高寿の瞳に宿る何かを敏感に感じとった愛美。理不尽な時の流れのなかで、彼女がどれほど高寿を想い続けたかが伝わってくる。
1巻から改めて読み返したくなる粋なボーナストラックだ。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

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