第4位(78ポイント)
『百合好きくんと百合好き好きくん』 U-temo
『百合好きくんと百合好き好きくん』
U-temo リイド社
これもうタイトルの時点でせつないの確定じゃないですか!
「百合好きくん」には彼女がいなくて、「百合好き好きくん」にも彼女がいないから、「百合好き好きくんが女だったらなあ」という百合好きくん。「2人とも男じゃダメなのか…?」って思う百合好き好きくん。字で書くとややこしいけどマンガだとわかりやすい。
『愛があれば××の差なんて』の著者が送る、……なんだろうコレ、メタ百合BL?(いわゆる「百合BL」問題とは関係ありません)
百合好きくんと百合好き好きくんの関係を遠くから「BLだ…」って熱く見守ってしまう「腐女子さん」や、BLや百合はダメだけどオタク全般が好きな「萌えオタくん」、萌えオタくんと微妙な距離感の「リア充くん」なども登場し、ややこしさ倍増。
百合好き好きくん尊い…尊いよ…。
オススメボイス!
■百合好きくんと百合好き好きくん(男2人)が外から観たらBLになっていたり、腐女子にリア充、萌えオタといろいろな個性ある人物がそれぞれ萌えあう、萌えられあうジェンダー的倒錯がおもしろい。(稀見理都/エロマンガ研究家)
第5位(62ポイント)
『モブ山A治とモブ谷C郎の華麗なる日常への挑戦』 吾妻香夜
『モブ山A治とモブ谷C郎の華麗なる日常への挑戦』
吾妻香夜 竹書房
名前を持つキャラクターの背景に描かれる、偶然そこに居合わせた人たち、すなわちモブ。本作は、そんな「目の前で華やかな人生を送る、名前のある人物」の背景になんとなく立っているだけではいけない、と自覚したモブキャラ2人の物語を表題作にくわえ、異母兄弟の甘酸っぱい恋模様や、熱血教師と不登校の美少年の危うい関係……と色濃い3編が収録されている。
『百合好きくんと百合好き好きくん』、『私の百合はお仕事です』とメタジャンル作が豊作な今月。こちらはまさかのモブ×モブBL。何をやってもモブキャラらしく、どこかしら茫洋としているのに、なんとなく関係が近づいていく2人が熱い。ギャグ路線かと思いきや、他の作品はほのぼのとシリアスと振れ幅が大きいのも読みどころ。
オススメボイス!
■この表紙と表題作のメタネタで笑わせてくれると思いきや、ほかの収録作はずいぶん違ったテイストも。より注目すべき作家さんですな(和智永妙/ライターたまに編集)
第6位(48ポイント)
『花園さん、結婚するんだって』 三つ葉優雨
『花園さん、結婚するんだって』
三つ葉優雨 小学館
花園咲は2年連続でミスコングランプリに選ばれたほどの、超美少女の16歳。そんな花園さんは妊娠して、結婚するために学校をやめる、ともっぱらの噂担っている。妊娠の噂を聞いて我が身を振り返るヤリチン、悪意のある噂に嫌悪感を抱くクラスメートの演劇部員、妊娠を打ち明けられた受け持ちの担任教師、花園さんの幼なじみ……。
本作は、そんな花園さんの周囲の人たちのエピソードを描く連作短編集。結婚・妊娠・退学という、人生の方向に影響する大事件がまとめてやってくる、それも学園一の美少女に、という問題作。噂話や怪文書が飛びかうなか、花園さんの本意が明らかになっていく。
オススメボイス!
■落ち着いたモノローグを中心に構成され、80年代とか90年代のマンガを読むような叙情と静かさがあった。あと、個人的には優等生・真司の視点にドハマりした。幼なじみの美少女と結ばれるっていうベタさを貫きとおしていてすばらしい(紙屋高雪/ブログ「紙屋研究所」管理人)
第6位(48ポイント)
『私の百合はお仕事です!』 未幡
『私の百合はお仕事です!』
未幡 一迅社
誰もが認める美少女の白木陽芽は、同級生との恋愛よりも将来の玉の輿を夢みる現実的な性格。自分の可愛さを自覚し、玉の輿のためにすべて「演技(ソトヅラ)」でやってると主張する陽芽だが、小学生の頃にソトヅラのよさが演技であることをバラされたトラウマを抱えている。そんな陽芽が働くことになったのは「丘の上のお嬢様学校 リーベ女学園」をコンセプトにしたカフェ。そこで憧れのお姉さま綾小路美月と出会ったものの、「お姉さまって呼ばないで」と叱られてしまう。
背景に花が咲き乱れる華やかな学園パートと、素の人間関係が出る閉店後パートの対比が楽しい作品。お姉さまの美月の意外な素性が判明し、続きが気になる!
オススメボイス!
■百合ってお仕事になるんだ……。そんな衝撃とともに女の子たちの「仕事」⇔「普段」のギャップにキュンとくる(のみやまみの/イラストレーター)
第6位(48ポイント)
『ワンダーフォーゲル』 草間さかえ
『ワンダーフォーゲル』
草間さかえ 徳間書店
閉所恐怖症の「稜」が沖縄の島に移住して、ひょんなきっかけで小説家「伊武」と知りあった。伊武は人の心を読めるという。台風を避けて泊まった稜と伊武は……。
稜がかつてすごした精神病院の院長の家で兄弟同然に育てられた「祐人」、祐人と幼い頃に出会い、今も祐人を探す「平坂」、記憶と精神の混乱を生きながら互いを求めあう青年たちを描く物語。
『明け方に止む雨』、『やぎさん郵便』、『魔法のつかいかた』の著者によって、錯綜する青年たちの想いがひとつの織物のように紡ぎあげられていく。冬の大学、嵐の沖縄、記憶のなかの公園など、情景の移りかわりも鮮やかで、繰り返し読みたくなると話題に!
オススメボイス!
■草間さかえ先生の新作、待ってました。設定や人物など複雑で、「これ何かの続編?」と思わせるような冒頭から始まり、はじめは「?」が浮かぶが、読み進めていくと「ああ、そうだったのか」とじわじわと心にせまってくる(よこさわゆう/ライター)