しかしこんなものは序の口、やがて観客を巻きこんだ地獄絵図に……。
このヒソカとクロロのバトルの見どころを数えあげるとキリがないのだが、なかでも特筆すべきは「言葉の裏読み」のおもしろさだろう。
非常に映像的かつスピードを感じさせる画の魅力もさることながら、クドいほど「正々堂々と」手の内を晒しているようでいて、その実まったく誠実やら公正などとはほど遠いところに立つクロロの吐く言葉1つひとつに仕掛けられた罠にゾクゾクさせられる。
彼の前では、ヒソカさえもバカ正直に思えるほどかもしれない。だが、まさかの結末を迎えたヒソカの、さらなるまさかの凶行。
あのヒソカがペースを乱されるさまは必見。
それについてはここで多くを語るのはあえてやめておきたいが、そんな唖然とすらさせられる濃厚な一戦の顛末すら、大きな物語の布石のひとつでしかないとも思わせられるのが「暗黒大陸編」のおそろしいところだ。
将棋やチェスの上段者同士が、一手を打つ間に膨大な思考を巡らせるがごとく、幻影旅団とヒソカを動かすために仕掛けられたこの一戦。“退場”となった団員には気の毒だが、今後の展開にますます興味を惹かれることになったのは間違いない。
単行本の後半では、いよいよ暗黒大陸に向けて大型船・B・W(ブラックホエール)1号が出港するが、船内はすでに緊張感MAXという状況。しかし王位継承の絡んだ陰謀、策謀は「イヤな予感しかしない」のに、それが物語としては確実におもしろいと予感させられる。
しかし命と血を吸ってストーリーが魅力を増すのが『HUNTERXHUNTER』ですから……。
そしてこの先の展開は、あたかも未知なる大海原への航海を始めた船のように、著者の冨樫義博自身にとっても見たことがない地点へのチャレンジになぞらえられるのかもしれない。もちろん綿密に練られたプランがあるのはいうまでもないことと思われるが、「見たことないものを見てみたい」という思いは、描いている当人がもっとも強いのではないだろうか。
読者としてはただ、「続きが楽しみ」のひと言に尽きる。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。