第4位(62ポイント)
『淡島百景』 志村貴子
『淡島百景』
志村貴子 太田出版
架空の歌劇学校を中心に描かれる連作短編集、待望の第2巻。
全国の歌劇ファンの羨望を集める淡島歌劇学校には、歌劇とは無縁の家庭から来た若菜、若菜と相部屋になる寮長の絹枝、三代にわたって淡島に通った桂子といった、それぞれの想いを胸に秘めた生徒(元生徒)たちがいた……。
絹枝の淡島進学を応援した叔母さんが、かつて桂子が淡島生だった頃に目の敵にした絵美の元同級生だったり、祖母を憎んでいた桂子が絵美への態度に祖母に通じるものを感じて自己嫌悪に陥ったり、桂子の女優時代の当たり役に若菜の母がハマったり……と、登場人物ひとりひとりの姿が丁寧に語られながら「淡島」内外の様子が縦横に浮かびあがる。
オススメボイス!
■すばらしいという感想以外ない。学校という舞台に積み重ねられた時間と記憶。演劇というテーマにつきものの光と影。ともにこれ以上ないほど活かされていて、一話読むごとに身震いするほどのクオリティ。志村先生の最高傑作では(小田真琴/女子マンガ研究家)
第5位(54ポイント)
『こうふく画報』 長田佳奈
『こうふく画報』
長田佳奈 ぶんか社
腕はいいけど神経質すぎる和菓子屋さんの有平さん、まだ新婚の清春さんと雪乃さん、お母ちゃんが熱を出して寝込んでしまった照彦さん一家、少女ながらに西洋かぶれの梅ちゃん。
少し昔の日本を舞台に、食をめぐる日常の「こうふく」を描く短編集。大福やシベリア(カステラの間に羊羹を挟んだお菓子)、お赤飯にスープ粥、つきたてのお餅など、様々な食べ物が登場。単行本化に際して追加された各話に書き下ろしページも要チェックだ。
オススメボイス!
■画力がすごい!! 全ページすばらしいです!!(旭屋書店なんばCITY店 平田/旭屋書店なんばCITY店コミック担当)
■大正時代を生きる人々の「食と日常」を描くオムニバス。西洋料理が根づき始めたり、庶民の食事情にも転換が起こっていたこの時代ならではのエピソードがおもしろいです。派手さはないけれど、どのお話も丁寧につくられた和菓子のようにじんわりしみます(梅本ゆうこ/ブログ「マンガ食堂」管理人)
第6位(48ポイント)
『おはよう、いばら姫』 森野萌
『おはよう、いばら姫』
森野萌 講談社
高校生の哲は「丘の上のおばけ屋敷」と言われる空澤家で家政夫バイトに励んでいた。
「本当は死んでいるのでは?」と噂されるほど人目を避けて暮らす空澤家の令嬢・志津は、じつは幽霊に憑依されやすい体質。そんな志津に一目惚れした哲は志津に告白するものの、その時に志津の体にはハルミチという中年男性の霊が憑依していた。しかし、志津と哲の気持ちが近づくにつれて、志津に憑依していた霊たちは現れにくくなっていく――。
「皆がいなくなってしまうなら 心なんていらない」
志津が漏らす悲痛な嘆きに、哲はもう一度告白しようとする。
憑依体質のヒロインと家政夫男子高校生の不器用ピュアラブストーリーが、とうとう感動の完結。
オススメボイス!
■無事完結。互いに支えあいながら前へと進む、温かい気持ちになる素敵な物語でした(いづき/ブログ「おとよめ」管理人)
■2人の表紙がとても印象的な最終巻。恋を知った幸せな気持ちも、支えてくれた人たちとの別れの辛さも、全部抱いたままそれでもこんなに優しくほほえみあう2人のことが、本当に大好きだと思わされたお話でした。ミステリー仕掛けで始まった物語が、どこまでもまっすぐな成長譚として昇華して構成もすばらしかったです(りる/感想系ブログ『空夢ノート+』管理人)
第6位(48ポイント)
『君曜日 鉄道少女漫画』 中村明日美子
『君曜日 鉄道少女漫画』
中村明日美子 白泉社
中学生のアコと、アコとは別の学校に通う小平は、塾で隣の席どうし。これまでSLにいっしょに乗ったり服を買いにいったり(小平が振り回し気味の)、デートを重ねてきて、この巻でようやく告白! 小平の直球すぎる気持ちにアコは困惑してしまう。
小平に想いを寄せる華絵、恋多き美女にしてアコの親友・みさっちんも大活躍の最終巻。それぞれの「それから」が描かれた作品を含む、『鉄道少女漫画』的な短編も収録されている(『鉄道少女漫画』は、アコが初登場した「木曜日のサバラン」を収録した短編集)。
オススメボイス!
■だんだん男らしくなってくる小平と、素直になっていくアコ。不倫になりかねない恋から始まったストーリーの着地点は、登場人物みんなを好きになれる「ザ・少女マンガ」でした(和智永妙/ライターたまに編集)
■すばらしい最終巻。これまで積み重ねてきた想いが、言葉となってあふれる展開はシビれた。今年下半期のトップにしたいくらいすばらしい(ふな/いつかたどり着く管理人)