魔族の女の子が主人公というファンタジー設定が大きなフックとなっているが、本作のキモはハートウォーミングな人間ドラマにある。
親子や恋人間の問題にコココが介入し、ドタバタを巻き起こしながら解決に向かわせる……という手法は、非日常的な存在が日常にまぎれこむ日本のマンガの伝統的なフォーマットをきちんと踏襲しており、読者をすんなりとストーリーへと導いてくれる。
また、作品の構成力も特筆に値する。
新人作家がファンタジー設定をもちいた作品の場合、設定や世界観の説明にスペースを割きすぎて、全体的に詰めこみ過ぎになりがちだが、説明パートを最小限まで削ぎ落とし、一方で見せ場となるアクションシーンは大胆に見せてくれる。
縮こまってなく、のびやかな印象が読んでいて心地よい。
そしてまた、その“のびやかさ”は、主人公コココの無邪気を表現するのにマッチしている。
あたらしい世界に足を踏み入れたコココの驚き、喜びがダイレクトに伝わってくるだろう。
新人らしからぬ技術的な「たしかさ」と、新人らしいフレッシュな語り口を、ぜひとも楽しんでもらいたい。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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