第4位(102ポイント)
『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』 さとうふみや、天樹征丸、金成陽三郎(作)船津紳平(画)
『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』
さとうふみや、天樹征丸、金成陽三郎(作)船津紳平(画) 講談社
これまで名探偵と殺人犯の数々の名勝負を描いてきた、人気ミステリーマンガ『金田一少年の事件簿』。そのスピンオフ作品である本作は、これまで描かれた事件を犯人側の視点から描いたもの! 一見血も凍るような壮絶な犯行を重ねる犯人たちだが、その内情は「トリックって金がかかる……!」「やることが多い……!」「みんなの前でトリックの粗をいうのやめて……!」と、かなり切実だ……。
ある者はアドリブで学園に隠された伝説をでっちあげたり、ある者は一生懸命、蝋人形をつくったりとそれぞれ工夫して犯行に及んだのに、それらをあっさり看破する金田一少年を見ていると、つい犯人側に同情したくなってしまう。一度読み終わると、今度はあらためて本編を読み返したくなる理想的なスピンオフだ。
オススメボイス!
■『中間管理録トネガワ』など「オリジナルの絵柄を完コピした公式スピンオフ」マンガが近年話題だが、そこへまた強烈な新作が登場。『金田一少年の事件簿』で各事件の犯人たちがどんなに苦労して大がかりなトリックをしかけたのかという舞台裏のドタバタを描く本作は、原典のすぐれたパロディであると同時に、ミステリ系マンガそのものへのセルフツッコミとなる鋭い切れ味があって非常に楽しい。他の公式パロ作品にもいえることだが、こうした遊びが可能なのはそもそも土台となるオリジナルがおもしろいから、というのを再確認できる意味でも有意義な形式だと思う(宮本直毅/ライター)
■「こういうことをやってもいいんだ!?」というのと、そのやってもいいかどうかわからなかったギリギリを完璧な形で攻めると、こんなにおもしろいんだという、2つの驚き(いのけん/麻雀マンガブログ管理人)
■連続殺人犯に必要なもの……それは知力・体力・演技力! せっかくそれらすべてを兼ね備えたのに、時の運が欠けていたばかりに金田一少年と出くわしてしまった犯人たちの回顧録。やっぱ殺人なんて割にあわないものですね……(犬紳士/養蜂家)
第5位(94ポイント)
『我らコンタクティ』 森田るい
『我らコンタクティ』
森田るい 講談社
仕事を辞めたいと考えているカナエは、帰宅途中に小学校時代の同級生・中平かずきと再会する。かずきは夜な夜な勤めている工場で独自にロケット開発をしており、カナエはその計画に一枚噛んでぼろ儲けをしようと企むが……。
やたらと金に汚いカナエ、宇宙人に映画を見せたいという変な動機で動くかずき、もらったお金をつい燃やしてしまうホステス、酒癖の悪いかずきの兄……と、やたらとアクの強い人々が集まって、ロケットを打ちあげるために右往左往。
一般人がロケットを打ちあげるまでのプロセスとそれぞれの人間ドラマを同時に描きながら、見事に物語を一巻で完結させているのがすばらしい!
オススメボイス!
■ロケットを飛ばす。好きだった映画を宇宙人に見てもらうために。という設定のぶっ飛び方に心をつかまれ、愛すべきキャラたちに心をつかまれ、丁々発止の大活劇に心をつかまれる全1巻のエンターテインメント(すけきょう/ポトチャリコミック管理人)
■UFOに映画を見せるためにロケットを飛ばすのだ、という夢とロマンと科学が詰まった全1巻。著者の森田るい短編集も早く出してほしい(山本浩平/まんだらけうめだ店コミックスタッフ)
■柔らかく伸びやかな線で描かれる画面はスタイリッシュで、特に構図がすばらしくショートムービーを観ているよう。それでいて登場人物はみなリアルなダメさを抱えた愛すべき人々で、いいことばかりではない日々をやりすごしながら、浮世離れしたロマンチックな目的に向かって意気投合する様にカタルシスを覚える。一巻で完結してしまったのが惜しいと感じる佳作(ぶち猫/ブログ「ぶち猫おかわり」管理人)
第6位(92ポイント)
『はじめアルゴリズム』 三原和人
『はじめアルゴリズム』
三原和人 講談社
講演会のため故郷である離島にやってきた、老数学者の内田豊。久しぶりに訪れた故郷で彼が出会ったのは、独学で数学を学ぶ天才小学生・関口ハジメだった。すでに数学者として限界を感じていた内田は、この少年を導くことが数学者として最後の仕事と決意する。
数学を題材にしている作品だが、本作で描かれるのは小難しい数式や計算ではない。本作で描かれるのは、島のなかで見える自然の風景や、学校での席の並びのなかに存在する、様々な法則を見つけだすための考え方のひとつなのだ。
また孫と祖父ほどの年齢差があるのに、数学に関することになると、本気で口喧嘩する内田とハジメの関係性もじつにグッド。
オススメボイス!
■数学者の頭のなかってどうなってんの? 彼らの目に世界はどう映っているのか、その一端をのぞき見たような気になれる(加山竜司/フリーライター)
■『ピアノの森』、『神童』、『のだめカンタービレ』といった、音楽的名作での「読み手はくわしくなくても読んでいてすごく楽しい」あの感覚を数学(風な表現)で組みあげています。これから主人公がどうなっていくのか、とても気になります。青年誌だからバトルものにはならないと思う。第2巻からですが、舞台も京都に移りますので地域の描写もどうなるのか楽しみ。しかも、紙単行本のカバー見返しには、岡潔さんのことまで書かれていて、その筋のひとにはツボではないでしょうか?(なみかわみさき/物書き)
■自らの限界を感じている老数学者が、数学で世界を知りたいという天才的少年を発見する。そのシチュエーションで心を強くつかまれた。事象を数学的な目で見、数学的なセンスで解こうとする少年の日々を通してどんな世界を味わえるのか、楽しみでならない(稲垣高広/ブログ「藤子不二雄ファンはここにいる」管理人)
第7位(64ポイント)
『天地創造デザイン部』 蛇蔵、鈴木ツタ(作)たら子(画)
『天地創造デザイン部』
蛇蔵、鈴木ツタ(作)たら子(画) 講談社
天地創造を行い、光・水・土、万物すべてをつくるはずが、肝心の動物を造るのは面倒になって下請けに出してしまった神様。本作はそんな神様の無茶ぶりによって、様々な動物の設計をすることになった「デザイン部」の物語。
「すっごい高いところの葉っぱが食べられる動物」「かわいくてかわいくない」「とにかくちまちま食べる動物」とふんわりした神様のオーダーと、それにこたえるべく、あれこれアイデアを練るデザイナーという構造がたいへん秀逸。
実在する動物をいろいろとおもしろい解釈で紹介する一方で、「ユニコーンってなんで存在しないの?」「おいしい生き物の条件って?」といった具合に、動物に関するうんちくをいろいろと披露してくれるのもうれしい。
オススメボイス!
■“この動物ってなんでこのフォルムなの?”っていうの、あるある! まさに「大人向けこども動物図鑑」。神様をクライアントとして、ざっくり投げてくるお題をデザイナー部隊が知恵を出しあって形にするという、製作会社ぽい構図なのもなんだかリアル(ホシ/ごきげんノベルス編集)
■神様の雑な発注を受けて、下請けの部署が地球にすむ動物をつくるため、あーでもないこーでもないと議論するマンガです。動物をプロダクトデザインとして考える今までなかった斬新なコンセプト。本作を読むと、キリンがなぜ首が長いのか、コアラがなぜコドモにうんちを食べさせるのかといった動物の不思議がなんとな~くわかります! すべては神様の発注が雑だからなんですよ!! 動物博士になりたいちびっ子必読の一冊!!(ゴロー/AV男優)