「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品を紹介! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、『からかい上手の高木さん』
「あにめのめ」にて1月8日から放送開始となったアニメ『からかい上手の高木さん』。放送前から原作ファンからの期待値も高く、東京・押上の高木神社とのコラボでは御朱印帖が売りきれるほどの大盛況! 2018年のアニメ始めにはうってつけの作品ですよ。
隣の席に座る女子・高木さんが、授業中も放課後も男子の西片をからかってくる。
もし自分なら、そのシチュエーションにカネをだしてもいい…と思ってしまう僕らの心はすでに汚れている。
からかいは絆だ。ずっと観察して、心のすきを見計らってくすぐりを入れる。「目が離せない相手」以外にできることじゃない。
この娘はどういうつもりでからかってるのか、といった思わせぶりはなし。第1話から、消しゴムの裏に好きな人の名前を書くくだりで、高木さんは「西片」と書いてるのだから(それを見逃してこそ西片)。別に本命がいるとか疑うことなく、からかいからかわれの関係をニヤニヤ見ていられる。
次こそからかい返してやる。毎度そう心に決めては、やっぱりからかわれる西片。
1日にからかわれた最高記録が、原作コミックのエピソードで確認できるかぎり54回、1日6時間はいっしょにいるとして約6分に1回。
高木さん、どんだけ西片のこと好きなのよ。
からかいは「学校で起こりそうなあるある」をもれなく抑えている。
早朝の教室で2人きり、雨の日に傘を忘れたことをドジだとからかえば、なりゆきで相合い傘。
西片がリベンジを仕掛ければ、甘酸っぱい思い出作りになって大慌て。学校空間の魔力、恐るべし。
からかわれる西片も、本当にかわいい。高木さんが水泳を休んでるとき「胸が小さいのを恥じて」と想像しては顔を赤らめ、「ファーストキス」という単語を投げかけられたらパニック。もしかして、ヒロインは西片?
からかいのおもしろさは、会話の“間”にかかってる。その点も、放送された第1話を観れば「あ、大丈夫だ」となった。西片が策に溺れてる顔を楽しんでる高木さん、赤面しながら言葉を絞り出す西片、まさに「マンガで読んでいた」とおり。
高木さんの声は高橋李依さん、『この素晴らしい世界に祝福を!』の爆裂魔道士めぐみん役が有名だが、今回は小悪魔的だった『乱歩奇譚 Game of Laplace』のコバヤシ寄りかもしれない。
かたや西片=梶裕貴さんは『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』での広瀬康一役と“ヒロインに翻弄される男の子”という縁を感じる。
好きな相手にちょっかいを出し、見つめあってるだけでうれしい女の子。その好意を受け止めきれずドギマギする男の子のやり取りには、だれもがこうだったかもしれない青春を胸に思い描くはず。テレビの前でいっしょに「からかわれてうらやましい!」と叫ぼうではないですか。
アニメはTOKYO MX、読売テレビ、BS11で放送されているほか、Netflixやニコニコ動画などの配信サイトでも好評配信中!
『からかい上手の高木さん』を観たあとに……
今回、『からかい上手の高木さん』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガ作品を紹介しちゃいますよっ。
『からかい上手の高木さん』山本崇一朗
『からかい上手の高木さん』 第1巻
山本崇一朗 小学館 \552+税 (2014年6月12日)
小学館「ゲッサン」にて連載中で、コミックスは現在1~7巻が発売中されており、最新8巻は2月9日に発売。累計300万部を突破している人気コミックだ。
隣の席の高木さんにからかわれている、中学生の西片くん。
毎日くりだされる高木さんのあの手この手により、西片くんが驚いたり焦ったり、時には不意にキュンとさせられちゃったりする青春コメディだ。
高木さんのからかい上手っぷりと西片くんの見事なもてあそばれっぷりが本作の見どころだが、そのやりとりの最中に、ふと見せる高木さんのうれしそうな笑顔にあなたもからかわれてみては?
『からかい上手の高木さん』のほかに、このマンガもおすすめ!
『あしたは土曜日 春・夏』山本崇一朗
『あしたは土曜日 春・夏』
山本崇一朗 小学館 ¥552+税
(2015年12月11日発売)
『からかい上手の高木さん』の著者・山本崇一朗が「読売中高生新聞」にて連載していた『あしたは土曜日』。
『からかい上手の高木さん』のスピンオフともいえる本作は、高木さん&西片のクラスメイトである3人の女子が主人公で、「春・夏」「秋・冬」の全2巻で彼女たちの日常を1年を通して描いている。
大人になってから見る彼女たちのありふれた日常は、なんともかけがえのない日々であることか!
コーヒーは苦い、携帯電話がほしい、夏服から冬服への衣替えは3人いっしょがいい……。
スピンオフだからこそ、あわせて読むと街や教室の雰囲気がつかめて、より楽しめること間違いなし。
もちろんアニメにも3人そろって登場! これはファンにもうれしいサプライズだったのではないだろうか。
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)、『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』、『超ファミコン』(ともに太田出版)など。