このように、序盤の段階では白馬の王子様に出会うまでは至らず、ほのかが風俗嬢として、一歩一歩キャリアを積んで成長していくエピソードがメインとなる。原作者の奏羽穂香が実際に経験してきたことばかりなので、披露される性技の数々はもちろん、本指名を取るための戦略、嫌な客のあしらい方、店の価格帯による環境の違いなどが、リアリティ満点に描写される。
ほのかが引き抜かれた「ローズ」も総額5万円からの高級店ではあるが、グループ全体では一番価格帯が低い店。「ローズ」で人気がでたら1つ上の「リリィ」へ。「リリィ」で人気をえたら、総額10万クラスの超高級店「ファレノプシス」へ……という、明快なヒエラルキーが存在するのだ。
ここから先は「少年ジャンプ」的な努力・友情・勝利のフルコンボ。取り立てて美人でもない金髪プリン頭のヤンキー少女が、心優しき仲間の助けを借りつつ、ライバルたちと火花を散らしながら、努力の末に美しいソープの蝶として羽ばたいていくことになる。うーん、悲壮感をぶっ飛ばす、熱い立身出世物語じゃありませんか。
冒頭にチラリと登場した金持ちイケメンの翔(かける)君から見初められるまでに、まだまだ一波乱もふた波乱も待ち受ける。持ち前の気立てのよさと反骨心を武器に上を目指し、決して努力を惜しまない、ほのかのガッツに胸熱。幸せな結末が待っていることを知っていても、応援せずにはいられません!
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。