話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『このマンガがすごい! comics 元風俗嬢が金持ち妻になりました』
『このマンガがすごい! comics 元風俗嬢が金持ち妻になりました』
奏羽穂香(作) やぎかつみ(画) 宝島社 ¥690+税
(2018年3月15日発売)
このマンガがすごい! comicsから待望のコミックスがリリースされた『元風俗嬢が金持ち妻になりました』。小説投稿サイト「エブリスタ」のノンフィクション部門で1位を獲得した異色のシンデラストーリーをベースに、コミカライズされたものだ。
10代の頃から援助交際を繰り返してきた少女が意を決して風俗の世界へ飛びこみ、様々な試練を乗り越えた末に、お金持ちの男性と出会ってゴールイン。タイトルでネタバレしているように、ハッピーエンドが既定路線である。
だからして物語は、主人公の“ほのか”が愛する旦那様に寄り添いながら、チャペルの前で幸せいっぱいの笑顔を見せるシーンから幕を開ける。そして、投げられたブーケとともに、舞台は7年前へ。
モノローグは「これは私の闘いの物語――…」。そう、本作はひとりの女の子が己の肉体ひとつで、苛烈な運命をブレイクしていった壮絶な記録だ。
DV両親から逃げだし、援助交際でどうにか食いつないでいた少女・ほのかは、先輩のレイカに誘われるがままソープランド「プチムーン」の門を叩く。入店ハードルの低い大衆ソープなので2人とも即採用、ただし講習も皆無で客質も悪そうだ。
それでも風呂ナシのボロアパートとはいえ寮も完備されており、ホームレス状態の最悪な日々よりはマシと前向きなほのか。ソープ歴25年のオジサンからいろいろ教わりつつも、気立てのよさを褒められて、天職かもしれないと考えるようになる。
ほのかのように風俗を駆けこみ寺にする女性は多い。仕事と割り切ってしっかり稼ぎ、次のステージに向かうためのステップにできるのが理想だ。だが、ほのかの場合は生まれて初めて“仕事”で手ごたえを得たことで、「ここが自分の居場所、この世界で生きていこう」という決意が固まってしまったのだ。
瞬く間に「プチムーン」の指名上位となったほのかは、客としてやってきた高級店「ローズ」の店長・神崎からスカウトされることに。風俗嬢になってから、まだ1カ月ちょい。戸惑いながらも「ローズ」に赴き、入店テストを受けることになるが……。