たんなる主従関係を超越した、家族とも友人とも恋人とも違う、不思議に心地よい2人の関係。全編に漂う、ささやかだがたしかな至福感がたまらない。
それはたぶん、ヴィクトリア~エドワードおたくであろう著者が本作を心から楽しんで描いていることにもよるのだろう。
こった装飾のマントルピースの暖炉に額縁、柱時計、カーテン……といった建築や調度品、紅茶道具、蓄音機、ペチコートにコルセット、ハイヒール……。
古き良き時代の暮らしぶりを伝える、デティ―ルへのマニアックなこだわりも楽しいが、読み口はあくまで軽い。だからこそ、また繰り返しページをめくりたくなるのだ。
今後も著者のライフワークとして描き続けられるであろう本シリーズ。
3巻ははたして何年後になるのか? 気長に待ちたい!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
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