止界における覇権をめぐって暗躍する実愛会の存在も、大きな謎をはらみながら展開する。
止界に関する知識をつづった「大円行記」を教義書としながら、一度は廃れた信仰を取り戻した佐河総主は、みずからも止界に乗りこんで冷徹にその真理を追究していく。
そして、佐河の相談役という女性・間島翔子も“もうひとつの目的”をもって止界にいる。彼女は22年前、偶然迷いこんだ止界で少女時代の樹里と遭遇しており、その時残してきたままの家族を解放すべく実愛会と樹里を利用しようと考える。
佐河と佑河、おそらくはルーツも同じであろう2つの家がどうして別れたかは謎だが、止界をさまよう真と翼を探し求めて二者は攻防を繰り広げる。
止界を闊歩する異形の怪物。誘拐犯たちを操る宗教団体。そして祖父や樹里に秘められた謎の力……。
物語は「緩急」の「緩」を忘れたかのように疾走し、冒頭から最後までクライマックス感満載。リアルでクセのある登場人物たちも、だれがいつ物語から退場するのかすら予測がつかず、ある種の緊張感を持って読まされる。
また、意表を突く物語もさることながら、読者がなんとなく想像する展開を、常にわずかにかわしながらストーリーが進んでいくのも大きな魅力。
気がつけば気持ちが振りまわされ、大きくのめりこむ。非常に中毒性が高い快感だ。
連載は6年間という長期にわたるものだったが、最初から終わりまでずっと「静止した時間」を描き続けてきたブレなさよ。
未読の読者は、これを機に一気読みをオススメする。きっと、時が経つのも忘れてしまうから。
『刻刻』著者の堀尾省太先生から、コメントをいただきました!
<文・良歩五郎>
漫画編集プロダクション・コンテンツボックス在籍。マンガ編集業務のほか、マンガ原作なども手掛ける。
時代なのか、最近では紙の雑誌よりデジタル媒体でのマンガ編集のお仕事が多いですね。