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ピース又吉『火花』芥川賞受賞! マンガ化の可能性は…!?【週刊「このマンガ」B級ニュース】

2015/07/28


先日、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹氏の小説『火花』が第153回芥川賞を受賞した(羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』と同時受賞)。同日発表の直木賞は、東山彰良氏の『流』。ちなみに東山氏は、『このマンガがすごい!』の兄弟誌『このミステリーがすごい!』の大賞第1回で銀賞を受賞し、『逃亡作法 TURD ON THE RUN』でデビューした作家だ。
宝島社初の直木賞作家だけに、直木賞の話をしたいところだが、いったん話を芥川賞にもどそう。
『火花』は、文芸誌「文學界」(文藝春秋)の2月号に掲載されて以来、話題が話題を呼び、単行本は純文学としては異例の120万部を突破。

こうなると映像化にもがぜん注目が集まる。2000年以降の芥川賞受賞作を見ても、金原ひとみ『蛇にピアス』(監督:蜷川幸雄)西村健太『苦役列車』(監督:山下敦弘)田中慎弥『共喰い』(監督:青山真治)などが映画化されており、『火花』にも熱視線が注がれているのは間違いない。
又吉氏の所属先事務所である吉本興業は、近年は松本人志(ダウンタウン)や品川祐(品川庄司)といった芸人監督の育成にも力を入れているから、又吉氏本人による監督作というのも可能性としてはゼロではない!? なにしろ『火花』は芸人の世界を題材にした作品。吉本興行が全面的にバックアップすれば、『漫才ギャング』(監督:品川祐)でのノウハウの蓄積もあるだろうし、かなりリアリティの高い映像が期待できる。

そして、マンガ好きとしては、コミカライズにも興味津々だ。
たとえば、すばる文学賞(集英社)受賞作をマンガにするなら「ヤングジャンプ」や「グランドジャンプ」に掲載されるだろう。あるいは新潮新人賞(新潮社)受賞作なら「@バンチ」か。
しかし『火花』の発行元である文藝春秋はマンガ雑誌を出版していない。吉本興業はかつて「コミックヨシモト」というマンガ雑誌を2007年に創刊したが、わずか7号であっという間に休刊したので、そちらの線もナシ。

いわば『火花』は即戦力候補の本格派の大型右腕が逆指名なしでドラフトにかかるようなものだ。出版各社が獲得をめぐって“火花”を散らしてるような状況と言えるのではないだろうか。
このドル箱スターをドラフト1位で一本釣りするためには、原作者(又吉氏)や吉本興業が納得するような作画担当者(漫画家)を用意することが不可欠だ。
そこで今回、『火花』をコミカライズするは、どんな漫画家か大予想をしていきたい。

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『べしゃり暮らし』第19巻
森田まさのり 集英社 \562+税
(2015年7月17日発売)


まずグリグリの大本命(◎)は、代表作に『ろくでなしBLUES』『ROOKIES』がある森田まさのり。
お笑い芸人の世界を描いた『べしゃり暮らし』は、およそ10年にわたる長期連載作品であり、ちょうど今月コミックスの最終19巻が発売されたばかりだ。

芸人になった主人公・上妻圭右は作中で演芸ホール「るみね」(ルミネtheよしもとがモデル)に出入りしたり、『火花』の世界観との相性はバッチリ。
いま次回作に向けて準備を進めている最中だろうが、森田版『火花』を見たい読者も多いのでは?

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『アイアムアヒーロー』第9巻
花沢健吾 小学館 \562+税
(2012年5月30日発売)


対抗(○)に挙げたいのは『アイアムアヒーロー』の花沢健吾。

又吉氏はさまざまな書籍のオビ文を数多く書いていて、『アイアムアヒーロー』9巻のオビ文を寄稿している。
実写取り込みの風景を大ゴマで挿入したり、ファウンド・フッテージの手法を効果的に用いるなど、表現手段の引き出しも豊富だ。台詞で説明しなくても人物の心理を見事に描写するので映画的でもある。『アイアムアヒーロー』は2016年に実写映画の公開が予定されており、話題性も抜群。

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『遠浅の部屋』
大橋裕之 カンゼン \1,200+税
(2013年6月6日発売)


そして単穴(▲)には大橋裕之の名を挙げたい。

代表作には『音楽と漫画』『シティライツ』があり、ガイナックス制作の実写ドラマ『エアーズロック』(監督:山下敦弘)でキャラクターデザインを手がけるなど、多彩な活躍をしている。
又吉氏は大橋の自伝的作品『遠浅の部屋』のオビ文で「大橋裕之の描く漫画は最高におもしろい」と絶賛コメントを寄せている。
一般的な少年漫画や青年マンガとは異なる、サブカル系マンガ独特のリズムと絵柄で内面的な世界を表現するので、テーマ的にも純文学とは相性がいい。前者2人にくらべると一般知名度は低いかもしれないが、表現力は折り紙付きだ。

また、登場人物同士の関係性の変遷を描くという部分においては、BL作家にも一日の長があるし、それもなかなかおもしろそう。
『火花』コミカライズ争奪ダービー、だれが描くか、だれに描いてほしいか。いっそのことコンペにして作品を募ってみてはどうだろう?
賞の名前は、もちろん又吉氏の名前にちなんで「直樹賞」ということで、ひとつ。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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