第4位 天然すぎる女子力は、乙女心と相反する……のか?
『月刊少女野崎くん』椿いづみ
『月刊少女野崎くん』第1巻(既刊6巻、以下続巻)
椿いづみ スクウェア・エニックス
浪漫学園に通う武骨な男子高校生の野崎梅太郎くん。じつは彼の正体は、少女たちに大人気の恋愛マンガ『恋しよっ♡』を描いている少女漫画家「夢野咲子」だった!
彼を好きになった美術部の佐倉千代は、なぜかアシスタントをやるハメに? ほかの個性的な生徒たちやマンガ界の人々のやりとりを描いた4コマ。『このマンガがすごい!2015』オンナ編第5位にもランクインした大人気作です。
みなさん、じつは野崎くんが相当な女子力の持ち主ということを、ご存じでしょうか?
ひとり暮らしで家事に慣れているだけでなく、合コンのシミュレーションで女役をすれば、手際よくサラダをとりわけ、料理やケーキ作りもお手のもの。リアル女子顔負けの女子力を誇ります(実際、ヒロイン・千代を落ち込ませることも……)。ついでに女子会(?)をトイレで(!)開くこともできます。
しかし、なぜ少女マンガを描いているのか不思議なくらい朴念仁なうえ、ワーカホリック気味の野崎くんは、それらの行動のモチベーションが「仕事に役立ちそうだから女子らしいことをやってみる」という、むしろ雄々しいものなのです。
そのため女子力が、トーン削りやベタフラッシュなど、マンガ制作技術と同等に見えてきてしまうかも!?
「日刊マンガガイド」での紹介はコチラから!
第5位 男子高校生ズを見守る愛天使?
『君と僕』堀田きいち
『君と僕』第1巻(既刊15巻、以下続巻)
堀田きいち スクウェア・エニックス
穂希高校に通う男子生徒たちの、おおむねゆるい日常を描いた作品。
面倒見がよいがクールな、双子の兄である浅羽悠太、その双子の弟で、面倒くさがりで適当な浅羽祐希、マジメだが時々キレることもある眼鏡キャラの塚原要、ドイツ系ハーフなのに小柄でおバカキャラの橘千鶴……と混ざって、ピカイチの女子力を誇るのが松岡春です。
茶道部に属し、癒し系で物腰柔らか、お菓子作りが好きで趣味や発想もメルヘンチックです。長髪にしているため、女性的な恰好も似合ってしまい、「女子以上に女子」といっても過言ではありません。
バレンタインデーや修学旅行などに織りこまれた女性とのエピソードでは、芯のある行動を見せるなど、男気があるのも魅力的。弟、冬樹に彼女ができた時の心配ぶりが、女子通り越して「お母さん」になっちゃっているのもカワイイんですよ!
ほかの登場人物たちに丸わかりな、年下女子の佐藤茉咲からの好意に気づかないほど鈍いのが難点ではありますが、彼がいるから、個性がぶつかりあう男子グループなのに、いつも居心地よいのではないでしょうか?(あれ? 待てよ? だからこそ、ほのかに恋愛があってもなかなか進展しない…?)
番外編 女子力? なにそれ受けなの? 攻めなの?
『腐女子になると、人生こうなる!~底~』御手洗直子
『腐女子になると、人生こうなる!~底~』
御手洗直子 一迅社
『31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる』でも知られる御手洗直子さんの、ほぼ実録に近い「腐女子になったらどうなるか」マンガです。
成績も運動もそこそこ、おしゃれもする普通の女子高生だったはずが、同人活動という「沼」に足を浸けた途端、職員会議で進級だけでなく卒業が取り沙汰され、さらにそのあと進んだ専門学校も綱渡り……という「底」まで沈んでしまうリアルなエピソード。(同人誌の奥付に住所などの連絡先が当たり前に載っているのもすごい!)
同人活動をやってみた途端、女子を捨てるというか、もはや人間をやめるレベルにまで振り切れる、恐ろしい過程が赤裸々に描かれています。
そう、「腐女子力」は女子力をあっという間に呑み込んで、どこまでも突き進むのです。原稿で徹夜を重ねすぎて謎の病気で倒れようとも、イベント遠征のバス車内で凍死しかけても(!)、なぜならそこに「萌えがある」から!
しかし、結婚を目指すなら必修科目だけれど、得るものがあるかわからない女子力を磨くより、「腐女子力の暴走」に身をゆだねるほうがちょっとだけ(?)楽しそうに見えるのは、なぜなのでしょうね……。(いや、いくら楽しそうに見えても道を外しちゃだめ!)
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。