リアアカ世界でのゲームは、現実の世界に大規模なエンターテインメント番組として中継されており、プレイヤーとなったアカウントたちがまず試されるのは、フォロワーたちとの信頼関係だ。
中継を通じて、「プレイヤーが死ぬとフォロワーもまきぞえになって死ぬ」というルールを知ったフォロワーたちは、「フォロワー数0で死亡」というルールを知りながらも、「命をかけるほどの間柄ではない」とあっさり、ときには、もっともらしい理由をつけて自己弁護しながら、プレイヤーたちのフォローをはずしていく。
「絆」「つながり」がとかくクローズアップされがちな昨今の世の中だが、はたして一蓮托生となるほどの強い絆は、SNSでの付き合いにどれだけ求められるのか?
つきつめられた設定描写ではあるものの、現実にもこうした瞬間は訪れかねない。
たとえば、ある日突然、仲の良いアカウントのなかの人がネガティブな出来事に巻きこまれたとき、「友だち」であり続けることはできるのか? といったように。
そして、最初の難関を乗りきってからも、SNSでの人々の行動のなかに潜む欺瞞、誰もが見えているはずなのに見なかったことにしているような思考の陥穽を突くようなゲームを、マーブルは次々と繰りだしていく。
インターネットに触れる時間が長く、特にSNS発の話題に触れることが好きな人であればあるほど、そうしたゲームと、それにともなう展開のなかで描かれる人々の行動、心理の動きには、うなずくことしきりのはずだ。
さて、本作の連載は『進撃の巨人』、『惡の華』ど話題作を続々と送り出している「別冊少年マガジン」でスタートしたのだが、現在は掲載誌を「週刊少年マガジン」へと移している。単行本では3巻以降が、「週刊少年マガジン」移籍後の内容となる。
3巻以降では、アタルとそっくりな見た目の向井ユウマが主人公となり、リアルアカウントのデスゲームも仕切り直し。
いきなりSNSのなかに意識を閉じこめられ、フォロワーとの絆が試されるという序盤の展開こそ同様だが、ストーリーが先に進むにつれ、「心の闇を抱えた殺人鬼」などエキセントリックなサブキャラクターが続々登場し、ぐいぐいと物語を牽引し始める。
その流れのなかで、主人公のユウマも意外な一面を見せるようになり、バトルや激しいアクション的な要素も、大きく作品に盛りこまれるように。
さらには、現実世界で真相究明に向かって動き出すキャラクターも登場。謎は深みを増し、物語のスケール感は、どんどん増していくのだ。
そして、1月15日に発売された最新刊の第7巻。物語は新たなフェーズを迎える……!
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei